あの日、やれたかも…? 新エピソードを判定!『やれたかも委員会』3巻は『おとちん』こだまさんとの対談も収録!

アニメ・マンガ

2019/3/21

『やれたかも委員会』(吉田貴司/双葉社)

 男はフォルダごとに保存し、女は上書き保存をする。これは「恋愛」における格言だ。確かに周囲の男性陣を見渡してみても、過去の恋人との思い出をいつまでも名残惜しそうに語っている人は少なくない。それがうまくいかなかった恋愛であれば、なおさら。もしもあのとき、こうしていれば……。不可逆な運命に対し、意味のない仮説を立ててしまうのだ。

 その極みとも言えるのが、ドラマ化もされた人気マンガ『やれたかも委員会』(吉田貴司/双葉社)だろう。本作では、「やれたかもしれない」数々のエピソードを取り上げ、「やれた」「やれたとは言えない」とジャッジを下していく。判断するのはタイトルにもなっている、「やれたかも委員会」の面々。犠星塾塾長・能島明、ミュージシャン・パラディソ、財団法人ミックステープ代表・月満子。このミステリアスな3名が、彼らのもとを訪れた相談者の「やれたかもしれない」思い出に耳を傾ける。

 このたび発売された第3巻でも、珠玉のエピソードが満載だ。

 たとえば、何度もデートを重ねた年上の女性のことが忘れられないという相談者の話。クリスマスにはふたりでイルミネーションを見に行き、帰り際には告白をするものの、答えは保留に。悶々とした想いを抱えていた相談者は事の経緯を友人に相談し、その流れでいきなり彼女の部屋を訪問する流れを掴む。……けれど、結局はやれなかった。部屋にあがると、彼女はずっと新聞を読んでいる始末。良いムードになることもなく、キスすらできず、ただその場を後にするのであった。

 この他にも、バイトを通じて知り合った風俗嬢とラブホに入った男性や、有名デザイナーと知り合い、手までつないだものの何もなかった女性など、さまざまな相談者たちが想い出を語る。そして、委員会のメンバーがその都度ジャッジしていくのだが、秀逸なのは月満子の見解。女性ならではの視点で冷静に分析をし、色っぽい想い出の奥に潜む真実を暴いていく。読めば納得。ただし、男性読者ならば、「やれたかもしれない」という想い出のほとんどがただの思い込みであることに気付かされて、落ち込むかもしれないが。

 また巻末には、作者・吉田貴司さんと『夫のちんぽが入らない』のこだまさんによる、スペシャル対談も収録されている。切り口は異なるものの、セックスにまつわる想いをカタチにしているふたり。やれなかったからこそ想い出は美しくなり、やりまくることで現実の重みを知る。セックスひとつとっても、捉え方はその人の状況で変わってしまうということが語られており、思わず唸らされてしまうだろう。

 過去の想い出にいくら仮説を立ててみたところで、現実が変わるわけではない。それでもそこにこだわってしまうのは、心のなかにあるモヤモヤに結論を出すことによって、前に進みたいからなのかもしれない。そう考えると、本作に登場する相談者たちは、みな、一歩前に進もうとしているようにも読める。……が、そこまで深読みするのは、無粋。まずは純粋に、数々の「やれたかもしれない」エピソードを覗き見して、青春だなぁと楽しむことをオススメする。

文=五十嵐 大