「ジャニーズらしさ」とは何のこと? SMAPや嵐、キンプリで振り返る平成ミュージックシーン!

エンタメ

2019/3/30

『考えるヒット テーマはジャニーズ』(近田春夫/スモール出版)

 日本の音楽シーンにおいて、「男性アイドル」といえばほとんどの人がジャニーズ所属のグループを思い浮かべるだろう。実際、商業的に男性アイドル界はジャニーズの一人勝ち状態である。ただ、その音楽性は一般的なヒット曲のスタンダードからは外れているといっていい。「感謝カンゲキ雨嵐」「チャンカパーナ」「抱いてセニョリータ」といった曲のタイトルからしてかなりユニークだ。

 しかも、ジャニーズは女性ファンだけではなく、ときとして男性にも愛される楽曲を生み出してきた。SMAPや嵐、Kinki Kidsあたりの楽曲は老若男女問わずに口ずさめるはずだ。独特なのに大衆的で、官能的なのにコミカルでもある―。そんなジャニーズを音楽的に分析した一冊が『考えるヒット テーマはジャニーズ』(近田春夫/スモール出版)だ。ぜひ、アイドルファン以外にも読んでいただきたい。

 著者、近田春夫氏はミュージシャンの立場から最新のヒット曲を批評する週刊文春の連載「考えるヒット」で知られている。本書は、同連載で1997年から2018年の間に発表されたジャニーズ関連の回だけをピックアップした「ベスト盤」である。Kinki Kidsも嵐もKAT-TUNもデビュー曲を取り上げられているのが、ひたすら懐かしい。

 ただ、近田氏の文章は容赦がない。今では「名曲」「国民的ヒット曲」と呼ばれているタイトルも、リアルタイムで聞いているからこその鋭さで斬り捨てていく。それだけに、好意的な批評が載ると「心の底から褒めている」とわかるのだ。

イントロでもうノックアウトされてしまった。とにかく直感的に新しい!と思えた。Jポップのイントロでこんなに興奮したことがない。(青春アミーゴ/修二と彰)

本物の歌謡曲、とはその楽曲と出会ったら最後、一生別れられなくなるもののことなのだ。(やめないで、PURE/Kinki Kids)

 そして、膨大な音楽的知識に基づき、楽曲の構造分析がなされていく。近田氏の批評眼は、耳の肥えたリスナーをも満足させてくれるだろう。「ズッコケ男道」(関ジャニ∞)のリズムから、同じ関西出身バンドのウルフルズとの類似点を指摘するくだりはさすがの一言。ちなみに、筆者が唸らされたのは、エリック・クラプトン作「友だちへ~Say What You Will~」(SMAP)についての回である。ビッグネームの提供曲にしては地味な印象だったが、その原因を見事に言い当てていて……。

 さらに、近田氏は「王道のジャニーズ」「ジャニーズっぽさ」の正体にも迫る。おそらく、国民の誰もがなんとなく抱いているジャニーズへのイメージを正確に言語化しようと試みているのだ。

ジャニーズの曲はいってみれば、何か立ちはだかるものに向かおうとする少年のこころの歌である。決してあきらめない。(誰も知らない/嵐)

斉唱する際に、なんだかいい具合にばらけているというか……パッと聴き「あ、上手い!」とはならず、むしろほのかな人間味をさえ実感させてくれる。(シンデレラガール/King & Prince)

 確かに、ジャニーズの楽曲はメンバーの年齢に関係なく、瑞々しさを残している。ほかの芸能活動ではどんなに年相応の表情を見せていても、楽曲の中で彼らは少年であり続けているのだ。また、上手い下手にかかわらず、メンバーごとの声質を聞き分けやすいのもジャニーズの特徴ではある。

 日本でいち早くヒップホップや電子音楽に反応してきた近田氏だけに、本書では「新しい/古い」という基準が非常に重要視されている。そして、少なくない数のジャニーズ楽曲に、近田氏は新しさを見出し、興奮してきた。流行の音楽に興味がない人も、アイドルとは距離をとってきた人も本書をガイドブック代わりにして、ジャニーズの個性的な音楽性を確かめてほしい。

文=石塚就一