ブラック労働から教師を救う時短テク! 5つの原則と40のアイディアを紹介

ビジネス

公開日:2019/4/25

『教師の働き方を変える時短 5つの原則+40のアイディア』(江澤隆輔/東洋館出版社)

 授業準備や個人の指導計画、教育委員会への提出資料、部活動…いま、全国の「先生」の働き方が問題になっている。仕事量が多く内容も多岐にわたるため、残業や持ち帰り、土日出勤は学校の先生にはよくあること。また、彼らは生徒一人一人の進路や気持ちにも向き合わなければいけないため、その責任は必然的に重くなる。

 文部科学省の調査によると、毎年5千人あまりの先生が精神疾患で病気休職を余儀なくされているという。その割合は一般企業の数字よりも大幅に高い。また連合総研の調査では、小学校教員の7割強、中学校教員の9割近くが過労死ラインに達しているというデータが出ている。先生を取り巻く環境は実にヘビーなのだ。

『教師の働き方を変える時短 5つの原則+40のアイディア』(江澤隆輔/東洋館出版社)の著者は、現役の小学校教諭。大学卒業後、2か所の中学校での勤務を経て現在に至る。著者は「時短スキル」を駆使して、教科指導にかける時間を充実させる働き方を実践している。

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 本書から、教師だけでなく社会人なら誰でも使える時短ポイントを3つ紹介しよう。

・仕事に優先順位をつけ「ない」

 教育書やビジネス書には「仕事には優先順位をつけて…」「仕事を全て書き出して緊急度の高いものから…」といったことがよく書かれている。しかし、著者はむしろ「順番をつける時間がムダ」と考える。多忙な教育現場では、仕事の優先順位を考える時間すら惜しいのが現状だ。加えて、生徒児童という人間を相手にしている仕事となると、突発的に仕事内容は変わっていく。そのため、締め切りの様子を見ながら今すぐできそうなことはすぐに終わらせたり、順番をあまり考えすぎずに片っ端からやっていったりすることが重要だ。

・「自分締め切り」で自分を追い込んで生産性を上げる

 著者は自分の中で「毎日最低でも◯時には退勤する」と決めて働いている。遅くともその時間には絶対に退勤すると決めるのだ。そのために、仕事の内容を逆算して計算し、1日の業務をこなしていく。「この仕事を素早く仕上げるためにはどうすればいいか」「この仕事は、やらなくていいんじゃないか」「これは時間をかけるべきで、絶対に手を抜けない」などと考えながら仕事を能率的に行うことで、生産性の高い働き方を心がけられるようになる。その働き方の参考となるのは実は「子育て世代」の同僚たち。保育園などのお迎えの時間が決まっている彼らは、絶対にその時間に仕事を終わらせようと時間をうまくやりくりしているはずだ。彼らの仕事の技を盗むのはとても有効なことである。

・いちいち書類をファイルしない

 学校では日々大量の書類や文書が配布される。また、学校でなくとも仕事柄書類が多くて処理に時間がかかるという職場はあるだろう。著者が実践している時短テクニックは「こまめに文書に穴を開け“ない”」というもの。文書を受け取るたびにいちいち穴を開けてファイルに綴じていては手間になってしまう。ポイントは、文書を貰ったら穴を開けずにそのまま該当ファイルに突っ込んでおくこと。「ファイルに文書が溜まってきたな」と思ったときに一気にパンチで穴を開けて綴じるようにすれば、うまく時短ができる。

 学校という多忙な現場で働く教師の時短テクニックは、多くの社会人の参考となるだろう。実際、著者は自身の勤務先で時短テクニックを同僚たちに普及させ、効率よく仕事を進めることで大きな成果を生み出してきた。著者が読者にすすめるのが、良い時短アイディアを周りと「共有」すること。「私のやり方なんて…」と思うかもしれないが、ちょっとしたことが職場のムダを減らして、皆が働きやすくなるきっかけになるかもしれない。

 本書には、著者がこれまで自身の経験で得た40個のアイディアが収録されている。「少しでも時間を確保したい」という社会人には、ぜひとも参考にしてほしい1冊だ。

文=ジョセート