大型連休中は、大掃除してみない? 義姉弟の複雑な関係を描いた、異色の掃除コメディ『汚物は消毒です』

マンガ

公開日:2019/5/1

『汚物は消毒です』(田口ケンジ/小学館)

 連休中、どこも行かずに家で過ごしたいと考えている人も多いはずだ。ただゆっくり過ごすのも良いが、連休だからこそあえて目を背けがちだった家の掃除をしてみるのはいかがであろう。『汚物は消毒です』(田口ケンジ/小学館)には、連休中にすぐ実践できるお掃除術が満載だ。

 本作の舞台となるのは、どこにでもあるごく普通の一軒家。主人公の清家司(せいけ・つかさ)は母親の再婚をきっかけに、義姉になる清家ましろと義父のいる家に住むことになった。

 しかし、司は15歳という多感な時期にあり新しい環境に対するいささかの不満を抱えていた。これから住む家が、自分の居場所とは思えないほどに。

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 一方ましろは、司との距離の縮め方に悩む。しかし、ある日司のズボラな性格のせいで起こった事件をきっかけにましろのあるスイッチが入り、司は彼女の意外な一面を目にしてしまう。

 彼女は“潔癖症”かつ“性格が変わるほどの掃除好き“だったのだ。

 作中で紹介される掃除テクニックの数々は、日常生活でよく見る道具を使用しており、すぐ実践可能だ。第1巻では、サランラップやキッチンペーパー、綿棒、レモンなどを使ったお掃除術を事細かにレクチャーしている。どれも目を見張る技術ばかりである。

 またこの作品は、掃除のテクニックを紹介するだけにとどまらない。まったく違う境遇で生まれ育ったふたりが、掃除を通して義姉・義弟としての距離を少しずつ縮めていく過程も描かれている。思春期という難しい時期に起こる異性への関心、それを意識しつつも家族としてこれから一緒に過ごしていくことに対するぎこちなさを、少しずつ溶かしていくのだ。姉弟漫画は数多くあれど、掃除を通して思春期の甘酸っぱさと複雑さを描いているのはこの漫画だけであろう。

 第1巻では、新しい環境に慣れない司がましろの掃除テクニックを通して掃除への意識を変えていくシーンが描かれているが、ふたりが家族になったことへのぎこちなさは最後までぬぐえていない。果たして今後ふたりがどのように家族としての関係を深め、どう変わっていくのか、またどのような掃除テクニックが披露されるのか、気になるところである。

 離婚、片親、義姉弟などふたりを取り巻く家庭問題は根深く、簡単に払拭できるものではない。現代社会にも通ずるものがある。しかしこの漫画はそれを踏まえつつも、どこかほんわかした気持ちにさせてくれるのだ。ぜひ連休中に読んでもらいたい。そして、気分が乗ったら、部屋の掃除も!

文=トヤカン