耳が不自由で非力な王子は成長の旅に出る。投稿サイトから人気が爆発した漫画『王様ランキング』

マンガ・アニメ

2019/5/4

『王様ランキング』(十日草輔/KADOKAWA)
『王様ランキング』(十日草輔/KADOKAWA)

 そこで描かれるのは、心あたたかい登場人物たちの、勇気に溢れた物語。

 十日草輔著『王様ランキング』(KADOKAWA)の第3巻が発売された。当作品はもともとマンガハックで投稿されていたWeb発漫画だ。2018年にSNSで瞬く間に人気を集め、大きな話題となった。

 ちなみに、タイトルの“王様ランキング”とは、世界中の王様が能力によりランク付けされるというものである。

 物語の主人公は、心は優しいが、耳が不自由で非力の王子ボッジ。会話でコミュニケーションをすることができず、重たいものも持ち上げられない彼は、王位継承を血の繋がらない弟に奪われてしまう。ボッジの夢は、父親のような強くてたくましい、立派な王様になることだ。一度は諦めかけた王様の夢を叶えるため、彼は旅へと出る。

 第2巻では、旅の途中で剣術指南役で味方であると思っていたドーマスの裏切りでボッジが大量の炎が巻き上がる地獄の門に突き落とされてしまうなど、悲しい出来事も起こるが、唯一の友人であり消息不明だったカゲが彼を助けることで、感動の再会を果たす。

 続く最新巻の第3巻では、カゲとボッジの2人旅が始まる。非力なボッジが王様になるためには、まず強くならないといけない。2人は、カゲが王の家臣であるベビンからもらった推薦状に書かれていた「ボッジを最強にしてくれる男」に会いに行く。それは王様ランキング2位である冥府の王デスハー、の弟、デスパーであった。

 彼のもとで稽古をうけることになったボッジは、まず自分に合う武器を選ぶことになる。その武器はいつまでも物語の中で明かされず、固く閉ざされた稽古場の外ばかりが描かれる。読者(とカゲ)がわかるのは、稽古が終わったボッジは毎回顔を真っ赤にして息を切らし、気絶するように寝てしまうということだけ。

 しかし、カゲはある日、驚くべき光景を見てしまう。稽古場の隙間から、ボッジの目の前で大きな岩が真っ二つに割れているところを…。重たい剣を持つことすら難しいボッジは、どうやって自分の力で岩を砕いたのか。そして、果たして何の武器を選んだのか、それはまだ明かされていない。

 一方、王位継承をした弟・ダイダにも次第に魔の手が迫る。彼に助言を与える謎の存在「鏡」により、亡き父であり世界最強の王ボッスの力を手に入れる方法を教えられるが、直感で「危険」だと察し、拒否。彼は自らの努力で強くなりたいと願うが、どうやら鏡はまだ何か諦めていないようで、不穏な空気が漂う。果たして、鏡の正体は一体誰なのか。こちらも謎が深まっていく。

 毎巻、ボッジの生態の謎が少しずつ明かされていく。まだ完全には解明されていないが、巨人の子であり特殊な生い立ちをもつボッジは、もしかしたら「ものすごい力」を秘めているのかもしれない、と感じさせる第3巻であった。

「世界中の王様がランキング付けされる」や「非力な主人公が強い王様になるため努力する」など、いわゆる王道少年漫画のような設定の本作品だが、実際に読み進めてみると、驚くほどにあたたかく優しい世界観が広がっている。

 ときには胸を痛めるようなシーンもあるが、登場人物は誰もが基本的に根がいい人だ。いじわるだった義母ですら、その心中は単なる「親バカ」だったりして、おかしみがある。

 お願いだから、出てくる人全員が幸せになってほしい。そう切に願ってしまう、稀少な作品だ。

文=園田菜々

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