心がほっこりする銭湯の物語、読めば心もほぐれそう!? 銭湯女子の日常に癒される『のの湯』

マンガ

公開日:2019/6/2

『のの湯』(釣巻和:著、久住昌之:原案協力/秋田書店)

 私見ですが…流行ってませんか? 銭湯。お風呂好き、サウナ好きはもちろん、市民ランナーがランニングの拠点にしたり、人が集まるという特性を生かしライブ会場やギャラリーとして活用したりと、いろいろなシーンでの活躍を耳にします。

 そんな銭湯をさらに好きになってしまいそうなのが、『のの湯』(釣巻和:著、久住昌之:原案協力/秋田書店)という作品。

 物語の舞台は、下町情緒の残る東京・浅草です。人力車の車夫として働く鮫島野乃は、ある日、銭湯に貼ってあったチラシで見つけた物件──家賃4万円、風呂なし、トイレ共同、ただし銭湯は入り放題──の、「湯毛荘」に入居することに。

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(c)釣巻和/久住昌之(秋田書店)2015

(c)釣巻和/久住昌之(秋田書店)2015

 同居人は、湯毛荘の管理人の孫でトリマーを目指す不器用女子・岫子(くきこ)と、日本ラブなラテン系アメリカ人の留学生・アリッサのふたり。「銭湯大好き!」な野乃は、幼いころから銭湯通いは日常&風呂にはひとりで入りたい派の岫子と、日本文化は愛していても裸のつき合いはちょっぴり苦手なアリッサを連れて、都内の銭湯をめぐります。

(c)釣巻和/久住昌之(秋田書店)2015

(c)釣巻和/久住昌之(秋田書店)2015

 野乃たちが銭湯に行く理由は、そのときどきでさまざまです。仕事の疲れを癒すため、アリッサの銭湯ニガテを克服するため、湯毛荘の管理人である岫子のおばあちゃんにバレないように、3人で合コンに行く準備をするため。野乃たちの銭湯づかいを見ていると、「そうか、銭湯ってそんなふうにも使えるなあ」と、目からウロコな気分になります。

 湯毛荘で一緒に暮らしはじめたばかりの3人ですが、心も体も裸になると、ふだんは言えないようなことであっても、つるりと言えてしまうから不思議。恋多き女・アリッサの思ったよりウブな悩みも、クールなようで意外と世話好きな岫子の一面も、きっと銭湯で、3人の関係があったまったからこそ見えてきたものだと思います。銭湯のことになるとよくしゃべるわりに自分のことは語ろうとしない野乃の生い立ちも、そのうちわかる日が来るのでしょうか。

 各話の終わりについている「のの’s 銭湯MEMO」では、作中に登場する銭湯の魅力やアクセスがコンパクトに紹介されていて、実際に野乃たちが行った銭湯を訪れてみることも可能です。野乃たちと同じ楽しみ方をするもよし、自分らしい楽しみ方を探るもよし。『のの湯』は、読んで楽しい、実際に体験して楽しい漫画作品となっているのです。

 なにかと忙しく、正直ではいられない毎日だからこそ、たまには心と体にまとっているものをすべて脱ぎ捨て、まっさらな自分になってみたい。そんなふうに思うのは、現代人に共通の願望なのかもしれません。『孤独のグルメ』の久住昌之氏が原案協力、『くおんの森』の釣巻和氏があたたかな筆致で描き上げ、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」で話題の女優・奈緒さん主演でTVドラマ化もしている人気作。ちょっとお疲れ気味の心も、じんわりほぐしてくれそうです。

文=三田ゆき

【お知らせ】
2019年6月から、Souffle(スーフル)で『のの湯』新連載がスタート!
こちらも要注目です。
https://souffle.life/