あなたや子供は大丈夫? 自己主張ばかりのネトウヨ・パヨクにはなってはいけない!

ビジネス

2019/6/6

『ネトウヨとパヨク』(物江潤/新潮社)

 著名人同士のツイッターバトルや、一般人のSNSでの炎上に実名特定公開etc. インターネットやSNSなど、誰もが気軽に発言できる「論壇」の登場はどうやら、世界を新たな「議論・論争の時代」へと導いているようだ。

 しかし残念ながら、オンライン上での議論・論争は多くの場合、匿名性原理も手伝ってか、お互いが主義主張だけを、時に罵詈雑言を交えて、ぶつけ合うだけに終始してしまいがちだ。

 では、真の議論・論争とはどのようなものか。そして、オンラインに限らず、テレビや雑誌などのメディアの場や、顔を突き合わせた直接的な場などにおいて、私たちに必要とされている議論・論争のスキルやルール、モラルとはどのようなものなのか。

 そうしたことを考えるうえで大いに参考となる1冊が、『ネトウヨとパヨク』(物江潤/新潮社)だ。

 本書は、東北電力、松下政経塾を経て、現在は福島県で学習塾を経営する著者が、フィールドワーク体験などを踏まえて記した、本来あるべき議論・論争の提言書と言える内容だ。

 タイトルにある、ネトウヨ(オンライン上で右翼・保守思想に傾倒した発言をする人たち)とパヨク(ネトウヨの対抗勢力)とは、いわば「議論・論争のできない人たち」の象徴であり、本書丸ごと1冊が、彼らについて割かれているのではない。

 もちろん、彼らが「議論・論争ができない」という判断に至ったのは、著者の単なる偏見ではなく、自身が実際にオンライン上やリアルの場において、両者との対話を試み続けたフィールドワークの結果だ。本書冒頭の数章には、その際の体験が記され、「他者の意見を聞く耳は持たず、自己主張をするだけ」「意見を同じくする人の集まりである“島宇宙”に属することに意義を感じている人たち」などと、その特徴をまとめている。

 ちなみに島宇宙とは、社会学者の宮台真司氏が提唱した言葉で、かつてのような同質性が失われつつある日本では現在、同質な人同士がグループを作り「島宇宙」を形成することで居場所としている、という考え方だという。

 つまりネトウヨ・パヨクは「言いたいことだけを論拠を無視して言う人たち」であり、政治思想とは関係なく、「誰もがいつ、そうなってしまってもおかしくない人たち」の象徴でもあるという。

 著者が、こうしたネトウヨとパヨクの思考傾向に対して無関心でいられないのは、ネットと親和性の高い子供世代への悪影響を懸念するからだ。

 本書には著者の塾生(中高生)周辺の証言や、中高生を対象にしたアンケート調査結果などが引用され、彼らがネットからさまざまに影響を受けている実態が明かされている。そして、深い思想的な背景などはもちろんないままに、隣国人に対して排他的な言葉を使う塾生の様子なども記されている。

 こうした若年層に対するネットからの悪影響に対しては、親世代だけでなく、教育界がもっとしっかりと対策をとらなければいけない時代であることを著者は訴えている。

 本書には他にもさまざまに「議論・論争のできない人たち」が登場する。反原発運動家や『新潮45』が休刊に至った原因となった、LGBTをめぐる論争についても言及し、その問題点をあぶりだしている。

 また、福島県においては、原発事故による避難者と地元住民の対立もあるという。著者はそうした場に積極的に身を置くことで、真の議論・論争のあるべき姿を追求している。

 世界に目を向けても、「対話」ほど望まれているものはないだろう。誰もが発言者となった今だからこそ、自由気ままに発言する口ばかりでなく、他者の声にしっかりと傾けるべき耳をも育てていく時代なのだ。

 ぜひ、本書でそのことの重要性を改めて感じ取っていただきたい。

文=町田光