当せん確率“1億分の1”の宝くじを積み重ねた高さは? 数字に強くなるフェルミ推定力

ビジネス

2019/6/12

『フェルミ推定力養成ドリル(ローレンス・ワインシュタイン、ジョン・A・アダム:著、山下優子、生田理恵子:訳/草思社)

 玉石混淆の情報が入り乱れる現代。何が正しくて、何が間違っているのかを自分なりに判断しなければならない時代においては、あらゆる物事の本質を捉えるための力も求められている。

 しかし、いわば“みきわめる力”を鍛えるのは至難の業。誰かに教えてもらうのも難しいところではあるが、ヒントになりそうな一冊『フェルミ推定力養成講ドリル』(ローレンス・ワインシュタイン、ジョン・A・アダム:著、山下優子、生田理恵子:訳/草思社)があった。一見、とらえどころのない“推定”の問題を常識と四則演算で解き明かせば、フェイクニュースや誇張された主張の問題点を見抜く力も養われるという。

推定すると“誇張された数字の真意”を読み取れるようになる

 企業の採用試験でも用いられている「フェルミ推定力」の問題。核にあるのは「大きい数字の意味に対する理解」と「ほんのわずかな基本事実をもとに、大まかで常識的な推定を行う能力」で、考え方を身に付ければ誇張された数字の真意も読み取れるようになるという。

 こうして聞くと“何やら難しそう…”と思い込んでしまうが、じつは、日常的に私たちはフェルミ推定力を活用している。

 例えば、A地点からB地点まで約400kmあるとして、車でどれくらいかかるかを考えてみてほしい。この場合、時速100kmであれば“おそらく4時間くらいかかるだろう”と思い付くはずだ。

 真髄にあるのは「世界の現実を捉え、自分の頭で考えるための強力な武器」を身に付けることであり、逆説的に、数字から“世の中の嘘”を見破れるようにもなるというわけだ。

アメリカで1年間に販売されたピクルスを並べたらどれくらいの距離になる?

 百聞は一見にしかず。ここで一つ、本書から例題を紹介してみよう。

アメリカで昨年販売されたすべてのピクルスをつなげるようにして並べていくと、どのぐらいの距離になるでしょうか?

 一見、突拍子もない問題に思えるが、これを解き明かすには「平均的なアメリカ人が1年間に食べるピクルスの数」と「平均的なピクルスの長さ」をまず、思い浮かべる必要がある。

 ただ、しっかりとした統計を用いる必要はなく、肝心なのは自分の日常から状況をイメージすることだ。とはいえ、この問題はアメリカの事例なので想像しがたい部分もあるかと思うが、本書の解き方を参考にするならばまず、町で売られているピクルスを「1cmよりは長いけれども、100cmはない」と考えておよそ10cmと決める。

 次に、ピクルスの消費を“ハンバーガー”になぞらえて「1年間に1個以上、1日当たり1個未満である」と考え、年間20個と個数を決めてしまう。

 あとは、それぞれの数字に約3億人といわれるアメリカの総人口をかければよく、この場合では“3億人×10cm×20個”となるので合計はキロ換算すると60万キロメートル。地球から月の距離を超えるほど、販売されたと推定することができる。

当せん確率“1億分の1”の宝くじを積み重ねた高さはどのくらい?

 それではもう一つ、本書にある例題を紹介していこう。

モリガンミリオンズという宝くじで当せんする見込みは1億分の1です。ありったけの番号のくじ券をすべて重ねたら、この山の高さはどれくらいになるでしょうか。

 この問題を解くための鍵になるのは「存在するくじ券の枚数」と「くじ券1枚の厚さ」を思い浮かべることだ。

 まず、枚数については当せん確率が「1億分の1」であることをヒントに、全体をそのまま1億枚と推定する。そして、厚さについてはイメージの近いものを想像して本書では「52枚1組のトランプ」を参考にしているが、その束が1cmであると推定すると、1枚あたり約0.02cmであることが分かる。

 あとは、それぞれの数字をかければよく、この場合は“1億枚×0.02cm”となるためキロ換算すると20kmであるのが導き出せる。

 本書ではほかにも「世界中の人間の血液の総体積はどのぐらいでしょうか」「地球上の氷床が溶けた場合、海面はどのぐらい上昇するでしょうか」など、フェルミ推定力を鍛えるための問題や解説が76題も収録されている。頭の体操をする感覚で気楽に挑戦してみれば、数字をしっかり捉える力も自然と養われるはずだ。

文=カネコシュウヘイ