絆が生まれる瞬間と離れる瞬間に存在する、必然の理由とは? 恋愛に必要な考え方のヒント

恋愛・結婚

2019/8/3

『男はその時、何を考えているのか? 彼の愛を呼び起こす39のヒント』(田尾真一/大和出版)

 さだまさしの「恋愛症候群」にある、「恋とは 誤解と錯覚との闘い」という歌詞は秀逸だと思う。相手には自分の良いところばかりを見せたがり、相手に夢中になっているあいだは欠点が見えず、二人で過ごす時間を幸せだと感じていたはずなのに、いつのまにか消えてしまうのが恋で、消えずに形を変えるのが愛だと唄っている。この度取り上げる『男はその時、何を考えているのか? 彼の愛を呼び起こす39のヒント』(田尾真一/大和出版)は、男性の著者が女性向けに書いた恋愛指南書である反面、男性自身が自分を見つめる本としても参考になるはず。

 キーワードとなるのは、最終章に示されている「受けなじの法則」だ。なにしろ相手は他人である。自分と違う点を好きになるかもしれないし、似た価値観に惹かれることもあるだろう。いずれにせよ、付き合うというのは「相手を自分に都合の良いように変えようとする」のではなく、「自分に相手からの影響を受け入れる」ということであり、だからといって相手の言いなりになるばかりでは、恋愛関係とは云えない。自分と相手の心の内をシェアし、お互いに「受け取って自分になじませていく時間」を、著者は「受けなじの法則」と呼んでいる。

 好きになった相手に色々とやってあげたくなる気持ちは当然であっても、それが相手からすると必ずしも喜ばしいとは限らない。世間では多くの男性がマザコンと指摘されることがあるように、これまた数多あるテクニック的な恋愛本では、世話好きが男性に好まれるから、いわゆる「女子力」を磨くように指南している。しかし、この言葉を提唱したのは女性だ。対して本書は、それは母親の嫌なところまで再現してしまい、「母親的な要素を感じてしまうと、男性は離れたくなるし、恋人として楽しむこともしづらくなります」と、男性側の心理を解説している。

 大事なコミュニケーションツールとなっているLINEの使い方については、「恋愛というのはそもそも、文字ではなく、五感を使ってするもの」と、やや古めかしい言い回しで便利さに頼りすぎないよう忠告している。特に、既読が付いたのにレスポンスが遅いとか、「わかった」などの簡易な返事にイライラしてしまうようなら要注意。仕事中に返事ができないのはもちろんのこと、男性には「無になってぼーっとする時間」があって、そんな時にメッセージが届いてもレスポンスするタイミングを失してしまうことがあるだけ。だから、「急用である時はそれをハッキリ伝える」というようにして、相手のライフスタイルを掴んでいくことが大事だとしている。

 そうは言ってもなかなか会えないのが仕事が理由なら割り切れても、飲み会や友人と遊ぶのを理由にされると、「私の優先順位は低い」と解釈してしまうのは仕方のないところ。でも違うのだ。著者が代弁してくれているように、「男にとって、優先順位と好きなものや大切なものは決してイコールではありません」というのが、その理由。飲み会や友人と遊ぶといった社会的なつながりのほうが優先順位として高いのは、それらが充実感にもなり活力にもなる。そして、そこで得た活力を、大切な相手に向けたいのである。ただし著者は男性の相談者に対して、女性と会った時に「優しくしているつもり」では気持ちは伝わらないから、しっかりと言葉で伝えるようにと助言したそうだ。

 この、言葉によって伝えるというのは「受けなじの法則」に至るために、最も必要なこと。「察してほしい」「先回りしてほしい」と考えてしまうと、自分が勝手に設定した問題を相手に見せないまま解いてもらうという難題を突きつけて、自分で自分を傷つける自傷行為にしかならない。私には愛がどんな形かは分からないが、お互いになじんでいって、好きになった相手との絆が生まれたら幸せだろうと思う。

文=清水銀嶺