おもろくて本気になれる働き方をしたい。LCCの優等生ピーチに学ぶ仕事をおもろくするための「やりくり」とは

ビジネス

2019/8/29

『「おもろい」働き方で社員も会社も急上昇する Peachのやりくり』(井上慎一/東洋経済新報社)

 2012年3月から、より私たちに身近になったものがあります。それは飛行機での旅です。1980年代以降、国際線の自由化に伴って飛行機の旅はめずらしくなくなったものの、やはり飛行機は電車やバスでの旅より高価というのが一般的な認識ではなかったでしょうか。

 それを変えたのがローコスト・キャリアと呼ばれるLCCの存在です。2017年に行われたとある調査によると、飛行機で旅をする人の4人に1人がLCCを利用したことがあるといいます。2019年の今、LCCの利用客はそれ以上に増えているかもしれません。そんなLCCの中で成功モデルとされているのが『「おもろい」働き方で社員も会社も急上昇する Peachのやりくり』(井上慎一/東洋経済新報社)に登場するピーチ・アビエーション(以下ピーチ)です。

 本書が役に立つ読者は、ピーチの利用者や航空業界で働く人に限りません。

「働き方を変えたい。自分が『おもろい』と思えるような仕事をしたい」
「アイデアで勝負したい。企画で人びとを驚かせ、よろこばせたい」
「自分の仕掛けで、会社の雰囲気やまわりの社員の士気を高めたい」

 そう考えている、すべてのビジネスパーソンのヒントになる内容が満載。国内でいくつかあるLCCの中で、なぜピーチがうまくいっているのか。本書に収録された36項からそのヒミツを垣間見ることができます。

 その中で、筆者がポイントと感じた部分を2つ紹介します。1つ目はピーチの判断基準は「おもろい」かどうかということ。たとえば、新しいプロジェクトを考えるとき、あなたはどのようにして考えるでしょうか。「はずして失敗しないように」「成功モデルを模倣」「いまの流行りに乗っかる」このいずれかを選択するパターンが多いはずです。

 ところが、ピーチは違います。基本的に「他社がやっているものはやらない」ことを徹底しているそうです。大切にしているのは「やってみたらおもろいんちゃう?」という視点。いくつものアイディアの中から実際に採用に至ったものの1つが「客室乗務員のあいさつを大阪弁でやったら、大阪の航空会社っぽくておもろいんちゃう?」というものでした。

 過去には、フォルクスワーゲン グループ ジャパンとコラボして「飛行機のなかでクルマを買うことができる」という機内販売サービスを実施したこともあるそうです。とにかくおもろいかどうかが第一。できるかどうかは二の次。その発想の仕方は、実現ベースで考えてしまう私たちにとっては強力なインパクトとなります。

 もう1つのポイントは、自社の提供するサービスを誰にでも分かりやすい言葉で明確に表現できていること。ピーチが着実に自社のターゲット層である20~30代の女性の利用客を広げることができているのは、「空飛ぶ電車」という分かりやすいコンセプトがあるからだと思います。

 LCCは持ち込むことのできる荷物の重量や機内サービスなど、さまざまな点でフルサービスの大手航空会社とは異なる点があります。機内でのドリンクサービスや機内食は有料です。座席の指定にも追加料金が掛かります。

 フルサービスを当たり前と考える50代以上の世代にはあまりウケはよくないようですが、空飛ぶ電車であると考えれば、こうしたLCCのサービスはむしろ合理的です。サービスの中身を1つずつ細かく説明するよりも、電車という既存の例を引き合いに出すことでスッと理解できます。

 こうした小さな工夫を表現するのは、書名にもある「やりくり」という言葉。就航前に「うまくいかない」と見られていたピーチで、就航3年で単年度黒字化を達成、5年で累積損失を一掃できた背景には、そうした「やりくり」の積み重ねがありました。

 本書には他にもさまざまな「やりくり」が考え方とともに紹介されています。

本気じゃなければ楽しくない。楽しくなければ仕事じゃない。

 ピーチの「やりくり」を知りたい人、こんな考え方に共感できそうな人はぜひこの本を手にとってみてください。

文=いづつえり