“おしゃピク”がしたくなる! 23年間ぼっち人生を貫いてきたOLの公園で出会った唯一無二の友情とは?

マンガ・アニメ

2019/9/10

『おしゃピクしませんか?』(南マキ/白泉社)

 南マキさんのマンガはいつも、不器用な愛に溢れている。エリート高校のさらによりすぐりを集めた「SA(スペシャルエー)」たちを描いた『S・A』。落ちこぼれとサラブレッド、2人の声優を中心に夢を追いかける姿を描いた『声優かっ!』。どちらも努力なしでは生き残れない世界に身を置く少年少女たちを描いてきたが、一心不乱に努力する、というのは、それ以外が人並み以上に不得手、ということにもつながりやすい。才能はあっても、人と関わることには誰より不器用な彼らが、それでも醜い感情で誰かに嫉妬したり誰かを貶めたりすることなく、できるすべてを費やして唯一無二の友達を手に入れていく――。その過程を読むとなぜか、途方もなくきゅんきゅんしてしまうのだ。最新作『おしゃピクしませんか?』(白泉社)も同様だ。

 主人公は地味なOL・久谷澪、23歳。生まれてこの方、友達ができたことのないぼっち人生を打破するべく――というより心配する母についた嘘を本物にするべく、いつも公園で見かける3人の女性に声をかけるのが物語のはじまり。顔見知りとはいえ、話したこともない女性からいきなり「一緒におしゃピク(おしゃれなピクニック)してくれませんか?」なんて言われたらドン引いて逃げ出してしまいそうだけど、澪の愛嬌と女性3人の人の好さがそうはさせない。インスタグラマーの主婦・華。庭いじりと食べることが趣味のお嬢様・陽茉里(11歳)。実家がケーキ屋さんで、お菓子作りが好きな17歳の女子高生・莉菜。とまどいながらも澪に協力することになった3人は、それぞれの本領を発揮して、最強のおしゃピクを実行するのである。

 ぼっち歴が長すぎて、誰かに好かれるためには努力しなきゃいけないと思い続けていた澪。けれど3人は、愉しいことばかりでなく、負担も共有することでともに過ごす時間の尊さが増すことを教えてくれる。そして2話以降、ほかの3人も、堂々としているように見えて実は、不器用なコンプレックスを抱えていることがわかる。頼りにされることでしか存在意義を感じられなかった華。みんなを笑わせるために自分が笑われることもいとわなかった莉菜。感情をおさえたいい子を演じることで、忙しい父を労わり続けてきた陽茉里。澪だけじゃない。誰もが、大切な人に好かれるために一生懸命になるあまり、本当はこぼしたい涙を、自分にさえ見せることができなくなっていた。そのいじらしさが愛おしくてたまらないのと同時に、読み手の心にも潜んでいる、空気を読んで我慢しがちな自分のことも癒してくれる。いいなあ、こんなふうに友達と笑いあいたいなあ、素直に誰かを好きになりたいなあ、と優しく前を向かせてくれる。

 インスタ映えもおしゃピクも、ともすると馬鹿にされがちだけど、時間をかけて準備したものを誰かと目で楽しみながら、わいわい胃袋におさめていく、その過程はとても尊い。おしゃピクはもちろん、読むと誰かを誘って外に出かけたくなる本作。ところどころで花咲きかける恋模様にも注目しつつ、4人の女性たちが愛でる時間を一緒に味わっていきたい。

文=立花もも