ツイッターのサザエさん実況が堀川くんのサイコパスっぷりを加速!? 国民的アニメをネットの世界から覗くと

エンタメ

2019/9/22

『アニメ サザエさん実況』(あさひが丘サザエ実況同好会/鉄人社)

 磯野家の日常を描く「サザエさん」は、誰もが“国民的アニメ”と認める人気作品だ。“日曜日の夕方”という、人によっては翌日からの学校や会社を思い浮かべがちな時間帯に放送されていることから、ときにはOAが始まると憂うつになるとも言われてしまう作品だが、裏返せばそれほどまでに広く深く浸透していることの証であるだろう。

 しかし近年、視聴者たちによる作品の楽しみ方が変わってきたという。その理由のひとつがツイッターだと主張するのが、書籍『アニメ サザエさん実況』(あさひが丘サザエ実況同好会/鉄人社)だ。インターネット上の“実況”をもとに、サザエさんを深く考察する1冊である。

■ぶっ飛んだ「サイコパス」っぷりで注目を浴びた堀川くん

 本書のいう“実況”とは、テレビ放送に合わせてリアルタイムで内容や感想をツイッターでつぶやく行為を示している。ネットで情報が瞬時に行き交う現代ならではの視聴スタイルとしてもはや市民権を得ている印象もあるが、国民的アニメ「サザエさん」の放送も、そこから派生してネットニュースとして話題にのぼることも多い。

 視聴環境の変化によってさまざまな側面が切り取られるようになった作品のなかでも、とりわけ注目を浴びるようになった存在が、ワカメの同級生である「堀川くん」だ。

 アニメ中での珍言・奇言が目立つ堀川くんには、これまでにもさまざまな逸話がある。例えば、自分の飼っているひよこに「ワカメ」と名付け「卵を産んだら、人間のワカメちゃんに食べてもらうよ」とワカメ本人に向かって言い放ったり、カツオの同級生である花沢さんの父親・金太郎に「すごいです、会社に行かないでビラを貼るだけで儲かるんですから」と告げるなど、「サイコパスっぷりがすごい」とネット上で注目されることも多い。

 本書によれば、放送初期から「ちょっと変わったワカメの級友」という基本的な性格は変わっていないが、ネットの反応を受けてか、彼がフィーチャーされる回は目に見えて増えているという。

■ネットがざわついた「ハイテク機器」の登場

 磯野家は令和の今なお、昭和の日本を生きている。ただ、家電製品についてだけは別モノ。ネット上の実況では、たびたび「ハイテク機器」の登場が話題にのぼっている。

 携帯電話はその顕著な例で、かつて波平がフネと通話するシーンが描かれた「なつかしの火の用心」という回が放送された。内容はタイトルのとおりで、“火の用心”の見回りに出た波平、マスオ、花沢さんの父親・金太郎がおでんの屋台に立ち寄った際、金太郎の「携帯電話」を借りて波平が磯野家に電話した場面は、ネット上を大いにざわつかせた。

 また、デジタルカメラが登場した話もある。それは「カツオ、名カメラマンへの道」と題された回で、カツオが写真コンクールに応募するため、波平と浅草など東京の各所を巡るのだが、その冒頭でサザエがマスオにデジカメの「夜景モード」を操作しながら質問する場面がある。

 ちなみに、この話には東京の名所として「東京スカイツリー」も登場する。舞台は昭和でありながら、過去と現代が入り交じった“タイムパラドックス”の世界で生きる磯野家をよく表したエピソードだ。

■実況者から称賛された「ノリスケ死のテーマ」

 ネット上の実況では劇中の「レアBGM」というキーワードが話題にのぼることも多い。その象徴とされる1曲が、俗に「ノリスケ死のテーマ」と呼ばれるものだ。

 実際に聴いてみると、耳にしたとたんその場から逃げ出したくなるような不安に駆られるこの曲。本書ではこの曲が「チープな不協和音」と称されているが、この曲が実際に使われたエピソードのなかでも話題となったのが、波平の作った“全自動タマゴ割り機”も注目された「父さん発明の母」の回だった。

 劇中ではノリスケがこのタマゴ割り機を馬鹿にし、それに対して波平が激怒した場面でこの曲が使われていたが、ネット上の実況者たちは「ノリスケに危機が迫っている様子を見事に伝える」として大絶賛。これ以降、俗称ではあるが曲のタイトルとして定着するようになった。

 さて、当たり前にあるモノほど、掘り下げてみると奥深いというのは世の常。誰もが知っている「サザエさん」を、ツイッター上の実況から読み解いた本書は、ひとつのアニメ作品だけでなくカルチャーをひもとく新たなアプローチの考察本だ。本稿で紹介したほかにもさまざまなエピソードと分析が収録されているので、あなたの週末の楽しみ方をきっと広げてくれるはずだ。

文=カネコシュウヘイ