人はいつ「父」になるのか? 出産育児を男性目線でセキララ記録! 『こうしておれは父になる(のか)』

出産・子育て

2019/12/11

『こうしておれは父になる(のか)』(本人/イースト・プレス)

 これからパパになる、あるいはパパになった男性へのおすすめが『こうしておれは父になる(のか)』(本人/イースト・プレス)だ。本書は、パートナーの妊娠報告に戸惑いつつ、出産前後から子育てまでを、“男性目線”で赤裸々に記録し、綴ったエッセイである。

 パートナーの妊娠、出産、息子との向き合い方などについて、考え、悩み、行動したこの記録は、軽妙な語り口でインターネットコンテンツとして配信された。さらにこの書籍化にあたり、約3,7000字を加筆している。読みごたえもあり学びも多数ある一冊だ。

■つらい! すごい! うれしい! 父になる記録

 著者の本人氏は音楽が趣味で、さまざまなライブやフェスのレポートをアップするインターネットユーザーとして活動していた。そんな彼の交際2カ月になる彼女から、妊娠検査薬の写真が送られてきたところから本書は始まる。予想していなかった、急すぎる展開に戸惑うふたりはただのカップルから次の段階へコマをすすめる。

 引っ越し、妊娠による彼女の心身の変化、妊娠中に起こる本人氏のやらかしがありつつ、出産と産後の準備に追われる。そうこうしているうちに出産予定日はやって来る。出産は壮絶(男性目線に限らず、多くの出産時の記録と同様に)だ。

 無事に妻と息子と3人でメジャーデビュー(音楽ファンである本人氏はしばしばこうして音楽シーンに喩えた表現を使う)したこの出産時、戸籍上は父となった本人氏には感慨はあっても親心は芽生えなかった。まだ「パパスイッチが入っていない」のである。ここから怒涛の育児編に突入していく。

 母親でもそうだろうが、父となるのはさらに簡単ではない。本人氏はこの記録をつけながら「父になっていく」のだが、本文からは「こうしておれは父に」「父になるのか…」「父になっているのか…?」と逡巡している様子が窺える。

 でもそういうものなのだ。父性は自然と芽生えないのだからしかたないのだ。ちなみに本稿のライターは、数年前に本人氏の状況を経験した。重要なのは「パパスイッチ」が中々入らなかったとしても、妻子に寄り添い、せめて何をすべきか、何をしてはいけないかを考え、行動することだ。本書にはそのヒントがたくさん詰まっている。

 私はやるべきことをやるしかない、とひたすらタスクをこなしていた覚えがある。というかそれしか覚えていない…もっと記録しておけばよかったと本書を読んでしみじみ思った。

■夫、“妊婦ビュー”になる! 育休とは? 妊娠出産情報はググっても得られない?

★妊婦は社会で大変

 妊婦ビューになった本人氏は、世間が妊婦について無関心であることに気づく。奥さんは電車移動中に優先席を譲られることがほとんどなかったそうだ。妊婦バッジを見たうえで眠りにつく人を目の当たりにしたこともあったという。

 エグイし辛いエピソードではある。私も妻の出産前後から、電車内ではできるだけ周りを注意して見るようになった。

★男性の育休について

 産褥期に1カ月の育休をとった本人氏。会社を休んで子供を眺めて家のこともでき、遊んだりもできる?と思っていたそうだが、面白いように育児で時間が消費されていった。「休み、とは?」とは正直な感想だろう。

 新生児は世話の頻度が半端ではない。脆弱で、栄養を欲し、清潔さを要求し続ける。加えて産褥期のママは、子供を産んで体が正常な状態ではないのだ。家に夫がいて当然であると私も思う。「男性の育休を義務付けたら」と本人氏は書いているが、同感だ。(私は取得せず親族を頼りました…)

★出産・育児はググっても答えが出ない

 本人氏はヘビーなインターネットユーザーだが、妊娠時の生活や子育てについては「ググっても答えが出てこない」ことに気づく。特に男性側、つまり父親側の情報が少なかったというのだ。上位に出てくるのはSEOだけはしっかりした、薄い答えが書かれたサイトばかりで、欲しい情報には会えなかったという。

 数年前も、検索したところで極端な情報、エビデンスの少ない情報しか得られなかった記憶がある。結果としては書籍を探すことになったが、これが探すのに時間がかかることと、自分が知りたい情報などが載っているかが不明だったので、非常に苦労した。

 本人氏は読んでいるこちらが心配になるくらい、赤裸々に産前産後の状況を男性目線で書いている。本書は読み物としても楽しいが、プレパパ(パートナーが出産する前のパパ)、新米パパにとって情報性が非常に高いといえる。

文=古林恭