組織をマネジメントするリーダーに欠けている「最も大切な視点」が幼稚園にある事実
更新日:2020/6/24
■あのスティーブ・ジョブズも応用した「割れ窓理論」
読者は「割れ窓理論」をご存じだろうか? ある建物の窓ガラスを割れたまま放置すると、道行く人が「この建物は管理されていない」とみなし、ゴミを捨てるようになる。すると住人のモラルまで低下し、最終的には犯罪が多発するようになる。
これは環境犯罪学で提唱されていることで、ニューヨーク市の地下鉄がこの理論を応用して大きな話題になった。地下鉄の落書きを徹底的に消し続けることで、最終的に犯罪件数を減らすことに成功したのだ。
そして「割れ窓理論」は職場でも応用できる。あのAppleは、スティーブ・ジョブズが経営者として復帰するまで、社内環境は最悪だった。そこでジョブズは社内の秩序を取り戻すため、遅刻する者を罰して、さまざまな社内ルールを徹底させた。そこからAppleは劇的な変化を遂げ、今やGAFAの一角として世界を握る。
森田さんも幼稚園の経営再建のため、まず行ったのは挨拶の徹底だ。そのために組織として必要で明確なルールを作り、チーム全員に共有させた。そして大人のいじめを見逃さないこと。なにより仲間の成功を心から喜び、チーム全員に自己重要感を覚えさせた。
ここまでの内容こそ本書が最も強く訴える、リーダーひいては組織の大前提だ。本書の後半では、「日本人は欧米に対してコンプレックスを抱いており、日本が古くから行ってきた日本式マネジメントが世界中で評価されていることを理解していない」と説いたり、お互いに尊重し合う関係がもたらす組織の成功循環モデル「グッドサイクル」を解説したりしている。
しかしこれらの内容は、礼節の重要性を理解できない人ほど、読むだけ無駄に終わる可能性が高い。組織の成功は、すべて職場の円満さが生み出すものだ。それを無視して成果を上げるのは不可能に近い。
職場で困難にぶつかったときほど、幼稚園の記憶を思い出せばいい。本書が提案するリーダー論やマネジメント論はとても分かりやすく、すべての組織に応用できる理論だ。これを無視して成り立つ企業があるならば、ぜひお目にかかりたい。
文=いのうえゆきひろ