仕事でも子育てでも自分が最優先! 他人との絆を必要としない新人類の姿とは

社会

2019/12/27

『ネオサピエンス 回避型人類の登場』(岡田尊司/文藝春秋)

 人類は今、新たな進化の段階に突入している。インターネットの広がりやパソコン、スマートフォンなどのデバイスは人間の心を変えようとしているのだ。そう語るのは、精神科医の岡田尊司氏。彼の著書『ネオサピエンス 回避型人類の登場』(文藝春秋)は、今の時代に急激に増えつつある新人類「回避型人類」の姿を明らかにしている。新人類だなんて大げさな表現だと思うかもしれない。だが、あなたには理解できるだろうか。周囲との関わりを持つことを欲しない人間がいることを。そして、そんな人間が確実に増加しているという事実を。

■他人は他人、自分は自分…周囲に興味を抱かず単独生活

 回避型人類の最大の特徴は、親密な関係を必要としないこと。言い換えれば、孤独な環境に強いことだ。孤独な環境におかれると従来の人類ならば精神に異常をきたすが、回避型人類はそんなストレスフルな環境にやすやす順応してしまう。1年間誰とも顔を合わせず、誰とも口を利かずに暮らしても、苦痛や不自由を感じることはない。むしろ、快適で安心でさえあるという。人に興味を持たず、共感することも共感されることもない回避型人類にとって、他人と顔を合わせ、関わりを持つことの方がずっと煩わしいのだ。

■セックスは面倒くさいし、気持ち良さも感じない

 親密な関係の最たるものは、性的に結ばれる関係だろう。セックスは内因性麻薬やドーパミンの放出を引き起こすだけでなく、オキシトシンの分泌を高めることによって、性的パートナーに対する愛着を高め、心理的のみならず生理的にも結ばれた絆を生み出す。だが、回避型人類は、元々オキシトシン系の機能が低下している。セックスによって得られる快感も少なく、男性は勃起しにくいし、女性はオーガズムを味わいにくい。ただでさえ人間関係を面倒に感じているのに、回避型人類は、苦痛を感じてまでセックスをする理由などないのだ。

■子育ても効率重視。回避型人類が回避型人類を生んでいく…

 セックスと並んで、回避型人類が苦手とするのが、子育てである。子育ては、オキシトシンの作用によるところが大きい。オキシトシンの働きが弱い回避型人類は、赤ん坊を見ても愛着を感じるどころかゾッとするだけ。可愛いと思えなければ、泣いている子どもをどうあやしていいのかもわからない。何でもマニュアル通りにこなしたがる回避型人類は、子育てに四苦八苦。面倒な手間はできるだけ省き、自分自身の人生を何よりも優先する。子どもは愛情不足から愛着障害になるが、自分の身を守るための方法が、愛情を必要としない回避型人類になること。そうやって回避型の子どもは増えていくのだ。

 親が忙しすぎて子どもの面倒をみる暇がない。時間があっても、スマホの画面にばかり気を取られて、子どもの方に気を配っていない…。「愛情が得られないなら、求めなければ良いのだ」と現実に順応してきた回避型人類の姿は合理的ではある。しかし、今は特殊に見える回避型人類がこれからますます増加していった時、世の中はどう変化していくのか。この本は回避型人類が生み出す社会をさらに予測していくのだが…。人との絆を大切に生きてきた私たちから見ると明るい未来が見えない。なんだかこれから恐ろしい未来が待ち構えているような気がする。あなたもぜひこの衝撃の一冊を手にとってほしい。新しい人類やその社会をぜひ覗いてみてほしい。

文=アサトーミナミ