23歳で知った出生の秘密。普通じゃない“定形外家族”で育った子どもたちが語り出した

社会

2020/1/21

『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(大塚玲子/SBクリエイティブ)

 家族の形が多様化してきている。とはいっても、「普通の家族」とはちょっと違う家族の形はまだ少なく、その中で育つ子どもに対して「かわいそう」という言葉を投げかける人も多い。だが、「普通から外れること=かわいそう」とは限らない。『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(大塚玲子/SBクリエイティブ)を読みさまざまな家族の形を知ると、そう実感する。
 
 本書は東洋経済オンラインの人気連載をベースに書籍化したもの。一般的な「普通」とは少し違う家庭で育った子どもの声も掲載されている。全15の“定形外家族”の実態を知ると、あなたの中の「家族」の概念が変わるはずだ。

■23歳の時に父親と血のつながりがないことが判明し…

 男性に不妊の原因がある場合や、独身女性、同性カップルが子どもを持とうとする時に「非配偶者間人工授精(AID)」という治療を受けることがある。本書に登場する石塚幸子さんは23歳の時に、自分がAIDで生まれたことを知った。

 きっかけは父親が遺伝性の難病を発症したこと。自分にも遺伝する可能性があるかもと思い調べていた矢先、母親から事実を聞かされて大きなショックを受けたという。

“仲の良かった母親が、そんな重大なことで私に嘘をついていた、というのがものすごくショックでした。たぶん、父親の病気のことがなければ一生いわずに済ませていたはずです。それでもいいと思っていることが一番許せなかったというか”

 母親が隠したいと思っているような方法で自分が生まれたことが嫌で、悲しく感じたそう。「なんで、そんなに悩む必要があるの?」という母親の一言をきっかけに家を出て、幸子さんはAIDに関することを調べ続けた。

 そんな彼女に転機が訪れたのは、ある新聞の取材を受けたこと。自らの経験や思いを告白し、AIDで生まれたという男性と出会うことができた。親に事実を隠されていたことや、精子提供者が分からないというAIDの仕組みに憤る男性の姿を目にし、「あぁ、私も怒っていいんだ」と思えるようになった。

 また、その男性の紹介で小児精神科医と出会えたことも大きかった。医師から、親に対して怒っていいし、文句を言っていいと助言をもらい、悩むことを許された気がして号泣したという。

 私たち大人は、自分が普通とは違う生き方を選んだ時、子どもにどう真実を打ち明けようかと悩む。もっと大きくなったら話そう…と思い、タイミングを逃してしまうこともあるだろう。だが、本書に掲載されている当事者たちは、幼くても親の口から真実を知ることを望んでいた。

 子どもは大人が思っている以上に親の心を見通しているように思う。だからこそ、その場しのぎにすぎない言葉は、「嘘」として捉えられてしまったり、事実を隠そうとする姿勢に見え、憤りを感じてしまったりする。そうすると親への信頼が揺らぐだけでなく、自分を責めるようにもなってしまう。我が子のためと思った配慮が、逆に心を傷つけてしまいかねないのだ。

■「かわいそう」という言葉が「かわいそうな子ども」を作る

 では、親以外の大人は、子どもにどう配慮していくべきだろうか。マジョリティでいるほうが生きやすいため、マイノリティの家族に対して「かわいそう」という言葉を投げかけてしまいがちだ。しかし、その言葉が「かわいそうな子ども」を生み出す原因になりうるということも胸に刻んでおきたい。定形外家族であっても、定型家族であっても、そこで暮らす子どもが幸せを感じていたら、それでいいと思いたい。

 この他にも本書では、統合失調症の母親と母子2人で暮らしてきた女性の人生や、虐待サバイバーである女性の生き様、連れ子の逆バージョンである「連れ親」を選んだ男子高校生の話など、さまざまな“定形外家族”のケースが紹介されている。

 それらのエピソードを目にすると、たとえ血のつながりがなくても人と人は親子や家族になれるのだと、そして家族の形はもっと自由であっていいのだと強く思わされる。

文=古川諭香