アニメーターの年収は125万円? みんなが知らないアニメ業界のブラックな真実

暮らし

2020/2/2

『アニメーターの仕事がわかる本』(西位輝実/玄光社)

 日本動画協会がまとめた「アニメ産業レポート」によれば、アニメ産業の市場規模は2兆円を突破したといいます。昨年の劇場版アニメだけでも『天気の子』や『空の青さを知る人よ』、『プロメア』などのヒットが記憶に新しいのではないでしょうか。海外でも日本のアニメーションは、NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスで好調。こうして見ると夢のある業界に思えますが、制作現場ではアニメーターが低賃金で休みなく働かされているブラックな業界だと聞きます。本当のところはどうなのでしょうか。

「いまのアニメ業界は過渡期にあります」。『アニメーターの仕事がわかる本』(西位輝実/玄光社)の著者で現役アニメーターでもある西位輝実さんはそう語ります。本書は、アニメ制作に興味を持つ人へ向けて、「制作会社とスタジオの違いって?」「アニメーターはフリー? それとも正社員?」など、一般人は知らないアニメーターの仕事についての質問、疑問に答えています。

 いまの業界内はアナログからデジタルへ移り変わる途中でもあり、課題も多いそうです。場合によっては他の業種ではありえない、トンデモな常識がまかり通っているアニメ業界の真実が綴られていました。

■アニメ制作現場のおかしな就業規則

 アニメ制作会社には2種類あります。元請けとなる制作会社、下請けとなるスタジオです。そこに勤めるアニメーターですが、実は7割がフリーランス。しかも労働形態が曖昧で、驚くことに大半の人たちにフリーの自覚がないといいます。会社に所属している認識はあっても正式な雇用契約を交わしていなかったり、会社によって備品は自前で用意するようにいわれたり、福利厚生やボーナスもなし。契約社員なのか、業務委託なのか、はっきりとしない。この時点で労働基準法的にとてもマズいような気がするのですが、恐ろしい話はまだ続きます。

『アニメーション制作者実態調査 2019』によれば、作画を描くアニメーターの平均労働時間は1日10時間、月の休日は平均5.4日、長時間労働や泊まり込みが頻発。出来高制で原画1枚あたり150~200円。これは新米でもベテランでも変わりません。著者は月300枚程度を手掛けて約4万~6万円だったといいます。基本給があるところや、専属で仕事をしてもらう拘束費がある現場など多少のプラスはありますが、実際は会社にマージンを引かれていて月々12万~13万円。年収では業界全体で平均125万円というデータがあります。それでも給料未払いのまま、倒産する会社も後を絶ちません。これは真っ黒です! まぎれもなくブラックです!

 ここまで理解した上で、アニメーターのなり方にも触れています。アニメーターの専門学校などもありますが、制作会社が主催する私塾などに通うのをオススメしています。しかしアニメーターになるのに本当に必要なのは画力。いまは業界全体が人材不足なので、絵さえ描ければ誰でもすぐに採用されて働けるそうです。ただしスキルのない人が現場に入り、ベテランが修正や書き直しに奔走し、余計に仕事量が増えるケースもあるそうです。肝心の人を選んでいないというのも、また怖いものがあります。

■変化の兆しを見せる昨今の業界

 そんなアニメ業界ですが、昨年、施行された「働き方関連法」によって変化の兆しを見せています。2020年には中小企業にも適用され、労働組合のないフリーランスでもブラック企業ユニオンという弁護団体を通して訴えを起こせるようになりました。業界全体が生まれ変わる過渡期にあるいまこそ、アニメーター全体が声を上げて課題解決に取り組むべきと訴えています。

 アニメを待ち望んでいる多くのファンも、これからもアニメを楽しむためには、他人事でいてはいけないのかもしれません。

文=愛咲優詩