誤ったネイティブ信仰、アウトプットの重要性とは? トップ通訳官が明かす語学習得の近道!
公開日:2020/1/30
今の世の中、英語は使いこなせるようになりたい。または英語でなくとも、日本語以外の言語を身につけて、仕事や人生を豊かにしたい。そう考えていても、なかなか勉強ができない人、続かない人、がんばっていても成果の出ない「遠回り」をしている人は多い。
『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)は、そんな悩める語学学習者に、少しでも「近道で」学ぶことができるようにと、通訳官の中川浩一氏が著した一冊だ。
中川氏は、世界で最も習得が難しいというアラビア語を24歳でゼロから学びはじめ、わずか4年8か月で外交交渉の会談通訳に、さらに4年後には総理大臣の通訳を担うまでに、と驚異のスピードでマスターした。
そこに至るまでの道のりは生半可ではないが、最難関言語をマスターせざるを得ない状況になったからこそ、中川氏はさまざまな逆転の発想、独自のメソッドに行き着く。同氏の努力の賜物の方法論は、すべての語学習得に役立つ。同書からいくつか紹介したい。
■あなたの意思を尊重すること、アウトプットのバランスを整えること
例えば、あなたは何のために英語を学びたいのか。いつまでに、どのように英語をマスターしたいのか。目的、目標、期間を決めることは不可欠だ。これをきちんと掘り下げずに、やみくもに勉強しても「大海へ地図もコンパスも持たずに漕ぎ出すようなもの」と、同氏は釘を刺す。
ニュースや新聞がわかるようになりたいのか、ビジネスでプレゼンテーションができるようになりたいのか、海外旅行を楽しみたいのか、海外で生活していきたいのか。それによって、手に取るべき参考書も、学習法もすべて変わってくる。例えば、「外国人と話せるようになりたい」という人は多いが、それなら何を話したいのかを考えよう。
日本人は英語学習に関して、学校でこれを覚えなさいと言われたものを、ただひたすらに“インプット”してきた。その素直さは、語学学習に有利なことではあるけれども、「外国人に何を話すのか?」という“アウトプット”を前提にしないインプットは、引き出しとして作用しない。だから、これまでの受け身の方法ではなく、自分の意思を尊重し、能動的に学ぶことが重要なのだ。
話せるようになりたいなら、話すというアウトプットに比重を置くこと。もしインプットとアウトプットの割合が8対2だったなら、5対5ぐらいになるように意識するといい。これまでインプット過重だった単語やフレーズを、ちゃんと口に出してアウトプットするのだ。スピーキング能力が上がるほどに、リスニング能力も上がる。
■「ネイティブ脳」は要らない。まずは日本語で考えて変換する
すぐに言葉が出てこないのも、アウトプットをしていないから。例えば、「広い」は、「wide」「broad」「spacious」と日本語からすぐ英語が出てくるように訓練する。そうすると、インプットしただけで使えない、読めるけど言えない単語が多くあることにも気づく。これらを棚卸ししていくと、効率よく使える単語を増やしていける。
よく「英語を英語のまま理解すること」が理想と言われるが、これについても同氏は、むしろ「わかったつもりになること」は、誤解を生む危険性があると指摘する。まだ幼い子どもなら試す価値はあるだろうが、すでに日本語が母語になっているほとんどの人には、まず日本語で考えて、英語に変換するのが「最短の道」という。
本書には、具体的な方法も詳らかに記されているので、本気で英語を学び直したい人も同書を読んで実践していくことをおすすめする。もちろん、「近道」とはいえ、語学習得の道は一朝一夕にはいかない。心が折れそうになった時も、第2章の外国語習得の15のエッセンスを繰り返し読めば、やり遂げるための励ましにもなりそうだ。
エッセンスには、“才能がなくても、器用でなくてもいい”ということが記されている。日本人は外国語学習に向いているのだ。まずは覚悟を決めて、スタートダッシュをして安定軌道に乗せること。そうすれば勉強は、毎日しなくたって良い。ただし、集中力はポイントだ。時に恥をかき、外国語という未知の世界との遭遇を楽しみながら、謙虚さと寛容さを忘れずに、意図をもって学んでいこう。
文=松山ようこ
この記事で紹介した書籍ほか

総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)
- 著:
- 中川 浩一
- 出版社:
- 講談社
- 発売日:
- 2020/01/15
- ISBN:
- 9784065184226
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2021年2月号 美少女戦士セーラームーン/島本理生特集
特集1 わたしたちのセーラームーンが劇場に帰ってきた! 「美少女戦士セーラームーン」/特集2 作家生活20周年 島本理生の祈り 他...
2021年1月6日発売 定価 700円
出版社・ストアのオススメ
双葉社
人生は“太巻き”みたい!?『生徒諸君!』と並ぶヒット作が約30年ぶりに帰ってきた!『Let’s豪徳寺! SECOND』 庄司陽子先生インタビュー
文藝春秋
のんが挿画を担当! 不思議な能力を持った少女が、アイドルを目指す。しかし、待ち受けていたのは凄惨なラストだった
白泉社
特装版はニャンコ先生のかわいいフィギュア付き!『夏目友人帳』26巻に「最高に癒されます」と反響続出
主婦の友社
ペットが生きているうちにこそ読みたい! 看取り、葬儀、供養…飼い主だからこそしてあげられる「ペットの終活」
ポプラ社
予想もつかない衝撃のラストが待ち受ける! 大人気「冬」シリーズの第3弾『その冬、君を許すために』に期待の声
楽天Kobo
楽天Kobo年間総合ランキングが発表! 1位は社会現象にもなっているアノ作品
ブックラブ
「ようやく本が出たんだなという実感を持つことができました」森見登美彦氏が登場! ブックラブ読書会レポート
新着記事
-
連載
「まるで忍者だよ…」いつも音もなく近づいてくる猫のキュルガ。もしかしてアノ技使ってる?/夜は猫といっしょ③
-
ニュース
「次の出血までに己を鍛えなおしておけ!」一見怖そうに見える“巨核球”だがじつは…/アニメ「はたらく細胞!!」第1話
-
レビュー
指原莉乃、バイキング小峠、さまぁ~ず大竹…彼らの言葉が心に刺さる理由を作詞家・いしわたり淳治が解剖!
-
レビュー
異世界転生モノの新ジャンルに「古代エジプト」はいかが!? 神秘と謎に満ちた古代エジプトの秘密を徹底解剖する1冊
-
ニュース
「奈良親子の“ダブルめんどくせー”は永久保存版」アニメ「BORUTO」第181話、うずまき親子の“忍組手”がおこなわれている一方で…