自分にふさわしい幸運を手に入れたい男たちと、「選ぶ」ことに疲れた女たち……『彼女ガチャ』で出会う恋人たちは果たして幸せになれるのか?

マンガ・アニメ

2020/2/14

『彼女ガチャ』(吉宗/芳文社)

 いつからか、人生をガチャにたとえる声をよく聞くようになった。親、子ども、恋人や配偶者、就職先の会社に上司。たとえ自分で選んだ結果だとしても、蓋をあけるまではなにが起きるかわからない。なにも悪いことはしていないのに。むしろ人一倍努力してきたのに。報われない、平等じゃない、その理不尽さに納得するためその言葉を使うんじゃないかと思う。ならばいっそ本当にガチャをひいて決めてしまおうじゃないか、というのがマンガ『彼女ガチャ』(吉宗/芳文社)である。

 本作はタイトルどおり「彼女をガチャでゲットする」物語。と聞くと「女性をモノ扱いするなんて」と怒る人もいるかもしれない。だが本作は、ただ男性の妄想を満たすだけの夢物語ではない。むしろ降ってきた幸運を当然と思い、浮かれて調子に乗った男たちはことごとく悪夢に落ちて、現実の厳しさを思い知ることとなる。

〈真剣な交際を行いたいあなた。本当のあなたを理解してくれる女性を探しているあなた。彼女ガチャでそんな彼女を手に入れませんか?〉。(おそらく)無作為に選ばれた人に送られてくるメッセージを受け取った男たちは、半信半疑で指定された場所におもむき、巨大なガチャマシーンのなかでカプセルに入って眠る女性たちの姿を目の当たりにする。1回あたり5万円。それで理想の彼女が手に入るなら安いものである。

 だが、せっかくレアキャラのすばらしい彼女をひいても、男たちはいつしか、尽くされることもセックスすることもあたりまえと思うようになる。すばらしい彼女のいる状態が“本当の自分”と錯覚してしまうのだ。現実にも、こうした男たちは少なくない。誰も本当の俺をわかってくれない、本当の俺はもっと認められていいはずだ。鬱屈のなかで、それでも地道に重ねられた努力が光っていたはずなのに、それさえ忘れて傲慢さを身につけてしまったら……。結果は書くまでもないだろう。どんな幸運を得たところで、生かすも殺すも結局は自分次第なのだと本作は残酷につきつける。

 だがしかし。女性たちは、なぜガチャに入ることを選んだのだろう? 女性たちの視点から描かれる2巻で浮き彫りになってくるのは「選ぶ」ことに疲れた女性たちの本音だ。

 女性の人生には選択肢が多い。結婚するかしないか、子どもを産むか産まないか、仕事を続けるか主婦になるか。どれを選んでも正解がない道もまた「ガチャ」のひとつ。だったら誰かに「これがあなたの幸せ」と決めてほしい。決定権を誰かに委ねてしまいたい。その気持ちもまた、よくわかるのである。

 さまざまなガチャの結果を描くことで、“今”の時代を象徴的に切りとっていく本作。2巻は、後輩を救い出すためひとりの女性が彼女ガチャに潜入したところで物語は終わる。彼女を通じて新たに描き出される彼女ガチャの本質と、幸せのかたちに期待したい。

文=立花もも