「あなたの番です」登場人物で「殺すタイミングを逃しました」とはだれのこと? 脚本家が明かす“新事実”をシナリオブックで確認せよ!

エンタメ

2020/2/18

『あなたの番です 反撃編 シナリオブック』(上・下)(秋元康:企画・原案、福原充則:脚本/飛鳥新社)

 昨年の夏、Twitter上で“考察ブーム”を起こし、2019年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされたミステリードラマ「あなたの番です」(あな番)。かく言う私も、放送中「#あな番考察」のハッシュタグで伏線回収に躍起になったひとり。そんな無数にちりばめられた伏線の“答え合わせ”ができるのが、『あなたの番です シナリオブック』(上・下)、『あなたの番です 反撃編 シナリオブック』(上・下)(すべて秋元康:企画・原案、福原充則:脚本/飛鳥新社)の4冊だ。

(以下はドラマのネタバレを含みます)

 まずは、同ドラマのあらすじを簡単におさらい。物語の舞台は、手塚翔太(田中圭)と手塚菜奈(原田知世)の新婚夫婦が引っ越してきた、とあるマンション。穏やかな生活を夢見る2人だが、ひょんなことからマンションの住人たちの間で行われる“交換殺人ゲーム”に巻き込まれてしまう。そのゲームとは、13人の住人がそれぞれ紙片に“殺したい人”を書き、クジのようにランダムに引き合うというもの。「ただのゲームだし…」みな軽く考えていたが、その日マンションの管理人が転落死。その後、“管理人さん”と書かれた紙片が発見され、住人たちは本当にゲームが始まったと怯える。その後も、チェッカーズ「ジュリアに傷心」が大音量で流れるなか首を切られて死んでいる住人や、往来で突然血を“ブッシャー!”と吹いて息絶える人など、衝撃的な死が連続。住人たちは、いつどのような形で“自分の番”が回ってくるのかと恐怖に打ち震えるのだった。

 第1話~第10話はキャッチコピー「毎週、死にます。」の通り、ほぼ毎週死人が出る展開で、第10話ではついに主人公であったはずの菜奈も帰らぬ人に。第11話から最終回までの第2章「反撃編」では、最愛の妻を殺害された翔太が、その悲しみを胸に協力者らとともに事件の真相に迫る様を描いている。

 同書は、そんなユニークな同ドラマの脚本をまとめたもの。巻末には、全20話を書き通した脚本家・福原充則さんによる各話レビューや、プロデュ―サー・鈴間広枝さんによる制作ウラ話をたっぷり収録。そのなかで、「実際、殺すタイミングを逃しましたね」と明かされる人物とはだれか。第9話で翔太と菜奈が“チキン南蛮”を食べていた理由とは。翔太の精神的な支えとなった“AI菜奈ちゃん”の誕生秘話。なぜ黒島沙和(西野七瀬)は榎本総一(荒木飛羽)に『宮沢賢治全集7』を渡したのか。そして最終回のラストシーンで赤池幸子(大方斐紗子)を殺した “真犯人”について…。今いくつか列挙した例だけでも、ファンにとって垂涎ものだろう。

 同書の醍醐味は、もちろんウラ話だけではない。せっかく脚本が丸々まとまっているのだから、奇妙な場面をあれほど鮮やかに映し出した“ト書き”にも注目したい。ト書きとは、脚本における登場人物の動きや場面の状況を指示したもので、一般的に「主語+述語」の形をとることが多い。しかし、同ドラマではところどころに“遊び心”が満載だ。例えば、二階堂忍(横浜流星)によるアクションシーン(第13話)では「二階堂が現れた(ヒーロー感、濃いめで)」「吹き替えなしの横浜流星による、7回は巻き戻して見たくなるアクション!」などと、思わず演者の気合いが入ってしまうような書き方。

 また、放送中に大反響を呼んだ黒島と二階堂のキスシーン(第18話)は、「二階堂、少々、雄になって黒島にキスをする」という実に感覚的なもの。1回目のぎこちない頬キスの後に、「…それで、おしまいですか?」と男性なら誰もが言われたいであろう“キラーフレーズ”を繰り出す黒島に対し、今度はがっつくように唇を奪う二階堂…そんなシーンのト書きを知った上で鑑賞すれば「はっは~ん…! 横浜流星くんの“雄っぽさ”はこんな感じなのね…」と、本来は得なかったであろう味わい深い“萌え”を堪能できる。

 脚本家・福原さんも「エクセルで管理していた」と明かすほどの膨大な情報量と、センスが光るト書き・セリフとが落とし込まれた“脚本”。同書を片手に、リアルタイムで鑑賞済みの方も、ドラマをイチから観返してみては。

文=桜木かき