おかしい? と感じる前に対策を! わかれば「アルツハイマー病」も怖くない

健康・美容

2020/2/18

『アルツハイマー病のことがわかる本』(新井平伊/講談社)

 アルツハイマー病は、一度発症すると手の打ちようがなく、妄想や徘徊の原因になる。さらに進行すると、記憶や感情すらなくなってしまう怖い病気。アルツハイマー病に対して、そんなイメージを持っている方は少なくないはず。そうした方に手にとってもらいたいのが『アルツハイマー病のことがわかる本』(新井平伊/講談社)だ。

 監修したのは順天堂大学医学部名誉教授で、アルツクリニック東京院長の新井平伊氏。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学を専門とし、日本で初めて若年性アルツハイマー病専門外来を開設したパイオニアだ。そんな新井氏が、アルツハイマー病は、いったいどんな病気で、どうすれば進行を抑えることができるのかなどをていねいに解説してくれる。ここではその一部を紹介していこう。

 

20年以上かけて進むアルツハイマー病。それに気づけるのは自分だけ

「アルツハイマー病と認知症は同じもの」。これは大きな誤解だ。認知症というのは、記憶や理解、判断、計算、言語など、脳の認知機能が大きく低下し、日常生活に支障をきたした状態のことで、アルツハイマー型認知症以外に、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、いくつかのタイプに分けられている。ただし、「認知症の6割はアルツハイマー病が原因」で起きており、認知症の原因となる代表的な病気であるのは間違いないことだ。

 では、アルツハイマー病というのは、いったいどんな病気なのだろうか? 本書は「アルツハイマー病で最初に現れる症状は、多くの場合、記憶の障害です」と指摘している。そして「自分だけが違和感を覚えている状態から明らかに認知症と診断されるまで、ゆるやかに進行していきます」と、その進行の様子を解説する。

 アルツハイマー病の原因は、アミロイドβという老廃物が脳内で沈着し、神経細胞が変性・死滅していくこと。アミロイドβの沈着が増えるにつれて、神経細胞内にタウたんぱくがたまり、細胞内の線維にねじれが生じていく(神経原線維変化)。これが進むと神経細胞が死滅し、神経細胞が大量に減少。認知機能が大きく低下してしまう。

無症状
 ↓
自分にしかわからない変化──アルツハイマー病によるSCD(主観的認知機能低下)
 ↓
認知機能の低下が起こり始める──アルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)
 ↓
認知機能の明らかな低下──アルツハイマー型認知症

 アルツハイマー病は、以上のような形で進行していくが、早い段階でその異変に気づけるのは本人だけ。20年以上かけてゆっくり進行するというから、忘れ方をチェックし、早めに専門的な医療機関を受診することが、進行を抑制するためにもっとも大切になるという。

認知症の発症は遅らせられる。まずは生活の質の改善から

 本書が教えてくれる重要な事実のひとつは、「現代の医学では、アルツハイマー病による脳の病変を消し、根治させる方法はありません」ということ。そして根治の方法がないからこそ大切になるのが、「予防」だという。

 アルツハイマー病が始まっていても、生活習慣病の予防、運動、断酒や禁煙など、生活の質を改善することで、実生活で大きな問題となる認知症の発症を遅らせることは可能になっているという。また、生活改善に加えて、薬物療法も行うことで、軽度から中等度、中等度から高度の認知機能障害が現れるまでの時間を引き延ばすこともできるという。

 生活改善の方法はひとりひとり異なるというが、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満・やせ、難聴、運動不足など、10のケースをあげて生活改善のポイントを解説しているので、ぜひ参考にしてもらいたい。また、脳内のアミロイドβを検出するアミロイドPET検査の存在も教えてくれるので、アルツハイマー病なのではないかという不安を持っている方は、受診を検討してみるのもよいのではないだろうか?

 2018年末、日本の認知症の人は500万人を超え、その数はさらに増えていくと予想されている。健康なときにはあまり考えないが、自分が、あるいは身近な家族の誰かが認知症を患う可能性はけっして低くない。そんなときに認知症の進行を穏やかに抑え、健康的な日々を一日でも長く過ごしてもらうために本書を役立ててもらいたい。

文=井上淳