親にも愛されず邪魔者になった娘が嫁いだ相手は…。「小説家になろう」発の嫁入り×和風ファンタジーのコミカライズ『わたしの幸せな結婚』

マンガ・アニメ

2020/3/28

『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみ:原作、高坂りと:漫画、月岡月穂:キャラクター原案/スクウェア・エニックス)

「小説家になろう」発の人気作『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみ/KADOKAWA)が、漫画版『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみ:原作、高坂りと:漫画、月岡月穂:キャラクター原案/スクウェア・エニックス)になって登場。その世界観や奥深いストーリー、繊細な心情の描写で人気を集めている。

 物語の主人公は、“異能”を受け継ぐ斎森家に生まれながら、異能の才をもたない斎森美世 (さいもりみよ)。異能とは、限られた人間がもつ力で、常人には見ることができない異形を討伐するために不可欠なものである。異能を受け継ぐ家は古来より帝に臣下として仕えてきた。異能には、念じるだけでものを動かしたり、離れた場所に一瞬で移動したり、壁に隔たれた先を見通す、などさまざまな力がある。

 美世を生んだ母親は薄刃家の人間で、薄刃家は人の心に干渉するものとして飛び抜けて異質で危険だとされている。斎森家と薄刃家はその特殊な力を少しでも濃く保つために政略結婚をし、美世が長女として生まれた。しかし、その美世は異能をもたず、その後母が病で去り、父が政略結婚以前に付き合っていた恋人と再婚したことで状況は一転。

 継母と異能をもって生まれた異母妹の香耶によって虐げられる日々が始まった。自分の食事も衣類も用意されず、継母と妹にこき使われ、使用人以下の生活。下僕のような扱いにすっかり慣れきった美世は、ただただ理不尽な扱いに耐え続けていた。

 しかし、19歳になってひとつの縁談が訪れる。嫁ぎ先は久堂家の当主、久堂清霞(くどうきよか)。冷酷無慈悲として有名な人物で、多くの良家の女性が彼と婚約しても3日とたたずに逃げ出していくという。そんな家に嫁がせるのは、事実上彼女を追い出す口実であったのだろう。全てを察した彼女は、もう後がない状態で久堂家に足を踏み入れる。

 冷酷無慈悲だと噂される久堂と美世がどのように関係性を深めていくか、はこの作品のもっとも大きな見所だ。名家の長女でありながら、二言目には「すみません」と謝る卑屈な美世に訝しがる久堂。冷たく見える久堂の優しさに気づき、じょじょに惹かれていく美世。食事やデートを繰り返していく中で、少しずつ距離が縮まっていく。

 久堂家に嫁入りし、どんどん美しくなっていく美世の姿にも注目だ。クールな美青年の久堂が、今までの女性に比べて何かが違うと動揺したり、美世を愛おしく想う気持ちを自覚して顔を赤らめたり、少しずつ人間味が出てくる姿にきゅんきゅんしてしまう。

 結婚から始まる2人の恋の進展はもちろん、物語が進むにつれて縁がなかったはずの美世と異能の関係にも変化が訪れ始め、どんどん物語に引き込まれていく。ラブロマンスのときめきと、ファンタジーのワクワク感、一度にどちらも味わえる作品である。

文=園田もなか

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