読後、気づけば背筋が伸びている。スケーター宮原知子の人生哲学にも触れる英語術の本

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2020/3/30

『宮原知子の英語術』(宮原知子/KADOKAWA)

 4歳で渡米。およそ2年半の米国滞在を経た宮原は、小学2年生になる春に帰国した。そこから、「せっかく身に付き始めた英語をがんばりたい」、「少しずつでも自分のできそうなこと、続けられそうなやり方を見つけて楽しんでやることを大切に」と、日本での英語学習をスタート。『宮原知子の英語術』(KADOKAWA)は、アメリカで始めたフィギュアスケートと学校の勉強に加えて英語にも正面から向かってきた、宮原知子という人のこれまでが詰まっている。

 黙々と努力を重ねて、ものすごいところまで上り詰める。スケートファンの知っている彼女は、そんな人だ。もちろんこの本でも、フィギュアスケートでの道程やその時々の思いも知ることができる。と同時に、随所にちりばめられたエピソードや関西弁、彼女自らが描いたイラストがかわいらしく愉快で、ページをめくるほどに、彼女の新たな一面に惹かれてしまう。

『宮原知子の英語術』というタイトルのとおり、英語学習についての内容も豊富だ。「小学校1年生レベルの英語力」で帰国した彼女が、現在のようにフィギュアスケートの記者会見で英語を使って堂々とやりとりするようになるまでの過程には、非常にインスパイアされる。ほぼ準備ゼロで臨んだTOEICの点数や、「官房長官」という英単語をすぐに答えたエピソードなどからも、彼女の英語力はたしかだ。さらに興味深いのは、彼女が中学生の頃から週1回通っている英語塾の先生からのメッセージ。そのコメントの端々から、宮原の凄さがあふれ出ている。

 最終章には、現場で役立つ英語フレーズ集も。たとえば、洋服屋さんで、サイズをチェックしたり試着したりするフレーズがあるのだが、たしか宮原は、慎重に試着を重ねたうえでもまだ買わない、石橋をたたきまくるタイプだったはず。そんなことを思いながらフレーズ1つひとつをなぞっていくのも、また楽しいものだ。

 華やかな世界で活躍している彼女が地道に勉強している姿には、静かに胸を揺さぶられる。彼女が英語にもフィギュアスケートや学業にも真摯に向き合っているのは、「自分に対して厳しくありたい」「自分に負けたくない」という思いからだという。そうした彼女の生き方やあり方、哲学のようなものが、全編を通して貫かれているこの本。フィギュアスケートのエピソードを楽しめ、英語学習意欲をインスパイアされ、読後は爽快、背筋を伸ばしてきちんと生きていこうという気持ちにさせられる。小さいのにものすごいパワーを秘めた、宮原知子自身のような1冊だ。

文=長谷川仁美

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