知らずに食べてごめんなさい! 人間も驚愕の知性・コミュ力を持つ「タコ」の習性

スポーツ・科学

2020/4/28

『タコの知性』(池田譲/朝日新聞出版)

 刺身や唐揚げ、たこ焼きなど「タコ」を使った魅力的な料理は、多くの日本人のお腹と心を満たしてきた。世界一のタコ消費国に生まれた私たちは、「食べ物」としてのタコをよく知る一方で、「生き物」としてのタコについてあまりにも知らなすぎる。足を8本持つ、軟体動物…そんな端的な表現でいつもタコは語られている。
 
 タコは私たちが思っているよりもはるかに賢く、謎が多い生き物。それを大いに教えてくれるのが『タコの知性』(池田譲/朝日新聞出版)。琉球大学教授である著者の池田氏は、もともとは謎の多いイカに魅了され、スルメイカの研究をするため世話をしていく中でタコにも興味を持つようになったという。そんな著者が手掛けているからこそ、私たちが「似ている?」と思っているイカの生態も交え、ユニークな“タコ語り”が本書には綴られている。果たして、タコの知性はどれくらいあって、彼らはいったいどんなことができるというのだろうか?

私たちがよく食べる「マダコ」は、知性のある生き物

 マダコはたこ焼きの具としてもよく利用されている最も身近なタコ。実は驚くべき賢さを持った生き物でもある。それを証明するのが、マダコへ「オペラント条件づけ」を行った際の実験結果だ。オペラント条件付けとは、報酬や嫌悪刺激に適応して、ある行動を自発的に行うように学習させること。例えば、おやつなどのご褒美をもらえることを理解して犬や猫が飼い主の呼びかけに応じるのは、この学習ができているからだ。

 タコのオペラント条件付け実験は、白いボールに攻撃をするたびに餌を与えるというもの。これによってマダコは、白いボールが目の前に出されると自発的に攻撃をするようになったという。

 また、タコは触覚学習もできる。腕で触って、目の前に置かれた図形やボールの大きさなどの違いを見分けられるのだ。こうしたタコの知性をフルに活かした研究では、もっと興味深い事実が判明した。なんと同じ種の他個体が行う行動を見て、マダコが「見まね学習」をすることが証明されたのだ。

 この実験ではまず1尾のマダコに赤玉を攻撃すると報酬が得られ、白玉を攻撃すると罰を受けることを覚えさせる。その後、そのマダコを入れた水槽の片側に何の学習訓練も受けさせていないマダコを入れ、お互いの姿が見えるよう、間に透明の仕切りを置く。

 そして、訓練済みのマダコに赤玉と白玉を見せ、覚えさせた反応をしてもらい、学習訓練していないマダコに見せる。それが済んだら、訓練済みのマダコを水槽から出して仕切りも外し、学習訓練を受けていないマダコに赤玉と白玉を見せるのだ。すると、驚くべきことに訓練を受けていないマダコも赤玉を攻撃し始めたという。

 私たち人間の目からみると、こうした見まね学習はごくごく自然なことのように感じるが、実はこれはチンパンジーでも難しいといわれるほど高度な学習。単独で暮らすとされているマダコが、どうして仲間の行動をまねる知性を身につけているのか。その明確な答えはまだ明らかになっていないそうだが、だからこそ一層おもしろい。

 本書では他にも、iPadを使ったタコの学習研究や、タコの社交性について論じるなど、「タコ三昧」の1冊。研究中として現在進行形で語られる“タコの生態解明話”にはロマンもあり、「命あるもの」としても新たな視点でタコを見つめたくなる。

 タコを飼ってじっくり見てみたい――そう思い、読後に「タコ×飼育法」と検索したくなるのはきっと筆者だけではないはずだ。

文=古川諭香

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