『夫の扶養からぬけだしたい』作者の最新作! 子育てから逃げ出す夫を改心させる方法は?

マンガ

更新日:2020/6/4

『親になったの私だけ!?』(ゆむい:漫画、耳たぶ吸ってたも~れ:原作/KADOKAWA)

 ソーシャルワーカーである主人公の美海(みみ)は、保育士の夫・晴彦と結婚し、1人目の子どもを妊娠。ところが、無神経な晴彦は妊娠中のつらいツワリに理解を示してくれません。子どもが産まれてからもどこか他人事で、休みなく育児を続ける美海はボロボロに…。しかし、どうにもならない現実を前に、一念発起して夫を説得。壮絶な毎日の中、夫と協力しながらできる子育て環境をすこしずつ手に入れていきます。

『親になったの私だけ!?』(ゆむい:漫画、耳たぶ吸ってたも~れ:原作/KADOKAWA)は、『夫の扶養からぬけだしたい』が大ヒットした漫画家・ゆむいさんによる新作コミック。在宅ワークが増えている今、家事や育児をしない夫にイライラしている人にぜひ読んでほしい1冊です。

 晴彦は家事もするし、子どもの抱っこもしてくれるけれど、どれも「手伝い感覚」なのが大問題だし、「よくやっているほう」と自分で考えているところが厄介。そんな晴彦の行動を、美海はどんな声かけで変えていったのでしょうか? 美海の壮絶な日々の一部を紹介します。

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「無理」「できない」で子育ては務まらないのに!

 子どもをかわいがってくれるけれど、オムツ替えや沐浴となると「無理」「できない」「美海のほうが効率的」と逃げ出してしまう晴彦。おまけに、休日は育児の手伝いもせずにフラフラと出かけてしまいます。

 美海は育休をとっていることに引け目を感じていて、働いている晴彦に厳しくも言えず…。同じ親なのに、夫の生活だけは何ひとつ変わらないのはなぜ? 美海は疑問を持ち始めます。

知らないうちに社会からはみ出すかもしれない怖さ

 出産する前は、福祉の仕事をコツコツと続けてきた美海。復職したいから、保育園には絶対に入園させたい! 必死の思いで保活をして、無事に入園が決まります。ソーシャルワーカーという仕事柄、保育園に入れなかった人たちのことも気になりながら…。

 無事に復帰した職場では、上司に子育ての悩みを打ち明けます。夫との意識の差に絶望したことや、「母親が働くのはワガママなのか」と考えたことについて…。

「主体性のある育児」ができるようになった晴彦

 美海の努力の甲斐あって、晴彦の行動がすこしずつ変化。「あれは無理」とまだまだ頭で決めつけるところはあるけれど、「子どもの命を預かる」意識を持てるようになったのが大きな違い。美海に言われたことだけでなく、「主体性」を発揮して、いい感じに家事育児を回せるように————。

相手の気持ちを考えることが問題解決のヒントに

 夫はどうして育児をしようとしないの?

 夫婦平等に子育てをするには、何が必要?

 そんな疑問から、美海の夫改革はスタートしました。美海の仕事は、トラブルを抱える人たちがより自分らしく暮らせるように支援していくソーシャルワーカー。仕事と同じように、自分を取り巻く問題についても俯瞰でとらえ、冷静に分析して解決していくところが、このコミックのおもしろさです。

 夫の晴彦にかける美海の言葉の一つひとつが身にしみて、「それが言いたかった! 代わりに言ってくれてありがとう!」という気持ちに。しかも、説得力のある言葉ばかりなので、うまく夫を説得する自信がない人にも役立ちそうです。特に、理屈っぽい相手には効果てきめんかも。

“お仕事漫画”として楽しめる一面もあって、美海と晴彦は、他者や社会とふれあいながら「親として」成長していきます。ただ読んでいるだけでも興味深く、夫婦で子育てについて語り合いながら読んでみるのも良さそう。

美海だけでなく「美海と晴彦」の物語

 注目は、美海が「夫に求めるもの」を語る場面です。子育てをするうえで、夫にどうなってほしいのか? 自分だけではなく、夫や子どもも、家族みんなが幸せに暮らすための美海なりの答えがつづられています。毎日疲れているし、夫を説得するのも面倒だけど、ただ不満を持っているだけでは何も変わらない。なぜそういう行動に出るのか、相手の気持ちを考えながら声かけをすれば、すこしずつ変わるかもしれない。

 そうして変わったのは、晴彦だけでなく美海も、でした。「女性は母親になったら自分のことも仕事もあきらめなくてはいけないのか」という問いに対して美海が導きだした答えは、同じ働く女性として深く感動するものがありました。

 美海だけでなく、「美海と晴彦」の物語を楽しんだ1冊。それまでの壮絶な日々を知っているからこそ素直に2人を祝福できるし、「次は自分も」と勇気をもらえるはずです。

文=麻布たぬ