「会社に行きたくない」は心からのSOS。精神科医が教える仕事や人間関係がつらい時の対処法

ビジネス

公開日:2020/6/15

『会社に行きたくない。さて、どうする?』(和田秀樹/クロスメディア・パブリッシング:発行、インプレス:発売)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、通勤をせずに働くテレワークに取り組んだ方も多いだろう。しかし緊急事態宣言が解除され、出勤を再開する会社も増えてきている。

 もしも今、満員電車での通勤や職場での煩わしい人間関係などをストレスに感じているなら『会社に行きたくない。さて、どうする?』(和田秀樹/クロスメディア・パブリッシング:発行、インプレス:発売)が役に立つかもしれない。

 本書では精神科医である著者が「会社に行きたくない」という気持ちの理由を探り、ラクに生きていくためのヒントを提案している。

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「会社に行きたくない」は心のSOS

「日曜の夜になると憂うつ」「仕事にやりがいを感じない」など、会社に行きたくない理由や気持ちの強弱は人によってさまざまだ。しかし、どんな理由や気持ちであれ、我慢して出勤している人がほとんどだろう。

 日本では会社に行きたくないと思うことを“甘え”だと感じ、「会社は絶対に行くべきところで、休むなんて許されない」という“かくあるべし思考”が強く根付いているという。精神科医の著者からすると、この考え方は好ましくない。

 本書では「会社に行きたくない」という気持ちは心身の不調を示すサイン、つまり心からのSOSだとしている。「会社に行きたくない」という気持ちを“単なる甘え”だと無視して我慢を続ければ、いつか心がポキンと折れて、本当に会社に行けなくなってしまうこともあるのだ。

 もしも「会社に行きたくない」と思うことが日常的になっているのなら、心のSOSを聞き逃しているかもしれない。なぜ、会社に行きたくないと思うのか。日ごろから、心の声に耳を傾けることが、うつ病や自殺といった深刻な事態を予防するのに大切なのである。

会社に行きたくない理由の多くは「人間関係がつらい」

 著者が2019年10月、働く男女を対象におこなったアンケート調査によると、働きたくないと思ったことのある人は8割を超え、その理由で最も多かったのが「人間関係がつらい」というものだった。

 たしかに会社では性格の合わない相手とも付き合っていかなければいけない。たとえば否定的な上司が嫌、という場合もあるだろう。しかし先ほど述べた通り、多くの日本人は限界がくるまで我慢し続けてしまう傾向にある。

気に食わないと思いながらも、その上司に好かれなければならない、という気持ちで日々接しているのだとしたら注意してください。
あなたは自分の気持ちに嘘をついているわけですから、次第に上司のことだけでなく、本心を偽っている自分のことも嫌になっていくでしょう。(p.147)

 本書では、その対処法のひとつとして「仕事を辞める・転職する」といった選択肢もあげている。しかしどこの職場にも嫌な相手はいるものであり、その決断が解決に結びつかないこともあるという。それでは「会社に行きたくない」という気持ちは、どう解決すればいいのだろう?

心のSOSを聴いたら「ひとまず休む」という発想を持つ

 産業医に相談したり、部署の異動を申し出たりなど、会社を辞めずに仕事を続けながらストレスを和らげる方法はいくらでも考えられる。しかしまずは「会社に行きたくない」という気持ちを甘く見ず、「ひとまず休む」という発想を持てるようにすることが大切だ。

 本書で著者は「安楽生」という生き方を提案している。この言葉は著者の造語で、心身ともに穏やかで楽しく生きる、という意味だ。人生の選択肢は自分にあるのだから、限界がくるのを待つだけの我慢はやめよう、ということである。

 もちろん「休むこと」と「無責任な行動をとること」は違う。しかし、自分を犠牲にして会社に尽くすことが責任のある行動ともいえないだろう。休んでいるあいだに周りが変わることはなくても、自分の心に余裕を取り戻せば「スキルアップのために勉強しよう」「転職活動をしよう」といったチャレンジ意欲も湧いてくるはずだ。

 最後に、本書には前向きに過ごすための10の習慣が紹介されている。そのひとつが「自分で自分を褒める」クセをつけること。人はポジティブに肯定されるとその言葉通りだと思いこむ傾向を持っており、これは自分で自分のことを褒めても効果があるそうだ。

「会社に行きたくない」という気持ちの扱い方、そして日々をラクに、前向きに生きるためのヒントが詰まった本書をきっかけに、自分の心の声に耳を傾けてみてはどうだろう。

文=ひがしあや