ゆる~いイラストで紹介する、深~いサメの秘密。果たして彼らは恐ろしいのか美味しいのか?

暮らし

公開日:2020/6/21

『ゆるゆるサメ図鑑』(アクアワールド茨城県大洗水族館:監修、和音:まんが/学研プラス)

 読者の皆さんは、サメに対しどんな印象を抱いているだろうか。物語の中では、どう猛な海の殺し屋として描かれることも多いが、横浜在住の小生としては、中華街の高級店に飾られた大きなフカヒレを思い出してしまう。さて、サメとは恐ろしいのか美味しいのか?

『ゆるゆるサメ図鑑』(アクアワールド茨城県大洗水族館:監修、和音:まんが/学研プラス)では、サメの飼育種数日本一を誇る「アクアワールド茨城県大洗水族館」の監修による、深~いサメ知識をゆる~いイラストで紹介。世界で500種以上といわれるサメたちの中から60種が厳選されているのだが、どれも個性派ぞろい。読み終えるころには、お気に入りの一匹が見つかるかも。

ホホジロザメ

 代表的なサメというと、映画『ジョーズ』でも描かれた「ホホジロザメ」だろうか。本書によれば、全長は6mにも及ぶ巨体ながら、海面をジャンプしつつオットセイを襲うなど抜群の身体能力を誇る。凶暴とされる種は他にもおり、中でも興味深いのが「アカシュモクザメ」だ。シュモクザメといえば頭部が横に大きく張り出し、その先に目が付いているユーモラスな姿が印象的だが、意外に凶暴で且つ群れで海岸付近に現れるなど油断ならない。なお、頭の張り出しは泳ぐときに舵の役割も果たすらしい。

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ジンベエザメ

 凶暴な種が目立つ一方で、おとなしい性質のサメも数多くいる。種類でいえば、こちらのほうが大多数なのだ。代表的なのは「ジンベエザメ」だろう。魚類として最大である17mの巨体ながらその餌はプランクトンなのである。海水ごと吸い込みエラでこしとり食べるのだが、なぜその大きな体を小さなプランクトンで維持できるのか? 熱帯から亜熱帯のプランクトンが豊富な海に棲んでいると、獲物を追いかけまわすより、周囲にある餌を吸い込めば楽だというのだ。全く気付かなかった利点に驚くばかりである。

ネコザメ

 おとなしいサメといえば、多くの水族館で飼育される「ネコザメ」も忘れられない。場所によっては直に触れられる施設もあるくらいだ。本来は浅い海の海底に棲み、エビやカニ、貝などを主食としている。小生は、その名の由来を不思議に感じていたのだが、実は「目の上の盛り上がりをネコの耳に見立てて」とのこと。また、面白い形の卵を産むことでも知られている。まるでドリルのようならせん状で、そのひだが岩に引っ掛かり、流されないようにしているそうだ。

イヌザメ

 ネコがいるならイヌもいるのではと思う読者も多いだろうが、やはりいるのだ「イヌザメ」が。「ネコザメ」同様に性質のおとなしい体長1mほどの小型のサメで、その名の由来は「イヌのように海底の食べ物をさがすから」とされる。鼻先に1対のヒゲがあり、それが感覚器官となっているようで、それを海底に押し付けつつエサを探し当てる姿が、イヌのように見えるからだろう。本書で初めて知った種だが、小生も「犬」を名乗るため、とても親しみを感じるサメである。

 物語や水族館でもお馴染みであるサメたちだが、乱獲や生息環境の悪化などで数を減らす種もいる。ホホジロザメやジンベエザメですら「ワシントン条約」で保護対象となっているのだ。とくにホホジロザメなど「海の支配者」だと思われるかもしれないが、彼らにとっては人間のほうがはるかに脅威となる存在なのだ。本書によるとサメによる被害は300件以上確認されているが、それは過去400年ほどの間の話。それに対し、人間によるサメ類の漁獲量は年間77万トンにも及ぶという。

 恐ろしそうと思うか、美味しそうと思うか、それとも可哀想と思うか。ただイメージだけで妄想するより、本書片手に水族館でサメたちに会い、自分たちに何ができるかを考えてほしい。

文=犬山しんのすけ