「欠点」を「自分らしさ」と受け止めるためには? 不器用な女子高生の恋愛漫画『ひとりぼっちで恋をしてみた』

マンガ

公開日:2020/7/15

『ひとりぼっちで恋をしてみた』(田川とまた/講談社)

 人は誰でも、短所や欠点を持っている。多くの人はそれらを改善しようと努力するだろう。しかし短所や欠点も「自分らしさ」と捉えたとき、人は自分らしさを失うための努力をしていることになる。最近思うのだ。もしかしたら「自分らしく生きる」「自分を好きになる」とは、短所や欠点を無理に改善するのではなく、すべて「自分らしさ」として受け入れることなのかもしれないと。

『ひとりぼっちで恋をしてみた』(田川とまた/講談社)を読むと、よりその考えが強くなっていくような気がする。

 本作の舞台は北海道北見市、主人公は野田有紗16歳。彼女は“天然”で“不器用”な自分の性格が大嫌いだ。しかし仲良しの同級生・翔子や由貴、密かに恋心を抱く教師・豊崎からの印象は良い。有紗だけが良しとしていないのだ。それは自分の性格が原因で、人に迷惑をかけてしまうのが怖いから。それゆえ彼女は、人に深く関わることをずっと避けてきた。

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 バレンタインデーの日、有紗の本命チョコを、翔子が豊崎に渡してしまったことで事態は急展開を迎える。有紗は、恥ずかしさのあまり翔子を責め立て、職員室にあったチョコを粉々に砕いてしまうのだ。しかしそれは有紗が作ったものではなく、豊崎が16年間想い続けていた人が、亡くなる前日に送ってくれたものだった……。

「大丈夫だ、野田」という言葉とともに、豊崎の目から流れる涙。有紗は、自分が最も恐れていたことを、自らの手で現実にしてしまったのだ。翌日、彼女は自分を戒めるように家出を決行してしまう……。

 本作はこの設定をベースに、不器用ながらも、自分を変えて大人になろうとする有紗の、懸命な姿が描かれてゆく。ただ、16歳という若さもあるからだろう。作中で彼女が取る行動には読み手もハラハラさせられる。読み進めていくほどに「なんでそうなっちゃうのー!?」という展開が待ち受けているのだ。でもそこが、天然で不器用な有紗らしい。

 また有紗の心の変化や、成長の描かれ方にも注目してほしい。1巻では道中で有紗を助けてくれる女性・千晶が成長のきっかけを与えてくれる。有紗は彼女の荒療治によって、今まで封じ込めていたようにも思える“ある言葉”を伝えられるようになるのだ。それは、僕ら読み手にとってはごく普通の言葉だが、1巻で彼女がしっかり伝えたシーンはない。きっと有紗にとって大きな成長につながったはずだ。有紗が口にした言葉とは?

 上述したように、人には必ず短所や欠点がある。ただそれを「自分らしさ」として受け入れるか、欠点や短所のまま捉え続けるかは自分次第だ。他者の目を気にして決めることではない。

 1巻では、まだ有紗は受け入れられていない。むしろ自分を変えようと必死だ。きっと彼女が欠点や短所を「自分らしさ」として受け入れられる日が来たとき、この家出は終わりを迎えるのだろう。果たしてその日は来るのか。そして無事に家出という名の修業を終えられるのか。今後の展開がとても気になる作品だ。

文=トヤカン