今さら聞けない!“2周目”続出『愛の不時着』は何が面白いのか?

エンタメ

2020/7/15

『愛の不時着』(Netflix公式HPより)

「STAY HOME中、何をしていましたか?」

 友だちや仕事仲間はもちろん、俳優さんやアイドルにインタビューをすると、ほぼ即答で「『愛の不時着』を観ていました」と返ってきます。もう、7月に入ってからは、質問者の私から「『愛の不時着』観ていましたか?」と聞くくらい、当たり前の現象になっているので、ゴロよく“自粛不時着現象”と呼んでいます。これは私も観なくてはいけないという強い責任感にとらわれ、観たが最後、1話1時間半前後の作品にもかかわらず、あっという間に16話を観てしまい、時間という概念が壊れました。面白い。これは面白い!

 本作は、財閥令嬢であるユン・セリ(ソン・イェジン)が、自社開発のパラグライダーに試乗し、竜巻に巻き込まれ、北朝鮮に不時着するところから始まります。すごい…発想がすごい! そこで北朝鮮の将校、リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)と鉢合わせ、出会うことから始まるラブストーリーなのですが、本来なら始末しなくてはならない不法侵入者のユン・セリを守るために、自分の部隊を巻き込み、偽の婚約者として暮らし始めるんです。しかし舞台は北朝鮮。私欲のために殺人は起こるわ、理不尽な罪で捕まりそうになるわ、毎日が大試練。つねに緊張感漂う中で、ユン・セリと、リ・ジョンヒョクはお互いに恋愛感情を抱いていきます。さらに、2人は以前からずっと繋がっていたと思えるような証拠が次々とあふれ出し…。ただ、韓国と北朝鮮に住む2人の恋愛が成就していいはずがありません。劇中では、「先がわからないからときめくんだ」と周りからその恋愛感情を否定されるシーンもありましたが、そんなのときめいたんだからその感情が大事でしょ! とテレビの前でヤジを飛ばした人も多いはずです。私も大声で叫んでしまい、隣で寝ていた子供が飛び起きました。

 本作を盛り上げるのは、この2人を取り巻く、リ・ジョンヒョクの部隊の隊員たち。ユン・セリに対していつも憎まれ口をたたきますが、一番彼女のことや、部隊のみんなのことを大事に思っているピョ・チス、寡黙で容姿端麗、韓国に来た際には大手芸能事務所にスカウトされまくるパク・グァンボム、北朝鮮で禁じられている韓国ドラマをこっそり見て、韓国の文化を熟知し、チェ・ジウを愛するキム・ジュモク、そしてこの部隊最年少であり、家族を大事に思う、純粋で心優しい少年、クム・ウンドン。この4人が、2人のために、体を張りながら、ときにコミカルに、いや、かなり笑いを取りながら話を盛り上げてくれるからこそ、ドラマは暗くなりすぎることなく、笑って見ることができるのです。ドラマ自体が長いため、ちゃんとこの4人のことも丁寧に描かれているからこそ、こんなにも感情移入できるのでしょう。

 さらに、親が決めたリ・ジョンヒョクの婚約者、ソ・ダンと、韓国で詐欺を働き、捕まらないために北朝鮮に身を隠しているク・スンジュンが絡むことによって、人間関係を複雑化させますが、彼らを知れば知るほど、「愛さずにはいられない!」「みんなまとめてオレが幸せにしてやる!」という感覚になってしまうのです…。

 2人がお互いを好きだと自覚してからは、またさらなるドラマティックな展開が待ち受けています。誰かを愛し、信じること。その先がたとえわからないとしても、絶望だとしても、信じ続けて、愛し続けることが、毎日を充実させてくれるということ。そして、つねに誰かの幸せを祈ることが、自分の幸せに繋がっているということ。愛の深さ、あたたかさをこの作品は教えてくれるのです。

 それにしても、リ・ジョンヒョクを演じていたヒョンビンのアクションシーンは本当にカッコよすぎて一瞬でも目を離せませんでした。それもそのはず、2011年から1年9か月の間、彼は海兵隊の教育訓練団に入隊。鬼の海兵隊といわれるほど厳しい隊に入隊し、精神的、肉体的にも成長した彼だからこそ、ここまでリアルに、北朝鮮の将校という役を演じきれたのかもしれません。その反面、誰とも付き合ったことのない、恋愛経験ゼロという、いくらなんでも無理があるだろうという役を、純粋に天然に演じきり、早い人では2話で「わたし、ジョンヒョクと結婚する」とうわごとのように呟いていたに違いありません。でも気をつけて! 悲しいことに、こんなに素晴らしく理性的でカッコよくて頭のいい人と結婚できる確率は、宝くじに当たる確率より低い気がしています…。

 見終えた後、多くの人が“不時着ロス”となり、また1話から繰り返す人も多数。先日取材した俳優さんは、「これくらい大掛かりのアクションとラブストーリーに出てみたい」と発言していましたが、たしかに日本では実現できないほどのスケール。その世界観にどっぷりと入り込むことができ、感情移入できる本作を、じっくりと堪能してはいかがですか? Netflix契約していないし…という方! 月額最低価格800円でこれだけの大作を観られると考えたら実質無料だと思えるはずです! そして本作を観た後に、大声で叫びましょう、「リ・ジョンヒョクと結婚したい!」と!

 少々取り乱しましたが、伏線の回収の仕方や、北朝鮮に詳しい人物にヒアリングして作られたという生活など、細部までこだわりをもって作られた本作は素晴らしいの一言。韓国ドラマらしく、一人ひとりの心情を繊細に描いているからこそ、後半は涙が止まりません。1話を観れば一気にその世界に引きずり込まれることを約束します!

文=吉田可奈

この記事で紹介した書籍ほか

週刊朝日 2020年 7/24 号【表紙:パク・ソジュン】 [雑誌]

出版社:
朝日新聞出版
発売日:
ISBN:
4910200840701