カワイイのに、こんなにエグい! 放課後、化学実験室で交わされる少女たちの倒錯愛『きたない君がいちばんかわいい』

マンガ

公開日:2020/7/17

『きたない君がいちばんかわいい(1)』(まにお/一迅社)

 ギャップ萌え、という言葉をご存じだろうか。たとえば、厳しい上司のちょっと情けないところを見たときや、クールな人から思いがけず熱い発言を聞いたとき、ぐっときてしまうというアレだ。「いつもと違う一面」は、誰にでも見せるものではないかもしれない。そう考えたとき、「私だけに見せてくれる顔」を持つ人のことを、あなたは特別に思わずにいられるだろうか?

『きたない君がいちばんかわいい(1)』(まにお/一迅社)の主人公たちのあいだには、そんな関係がやや危ういバランスで成り立っている。

 瀬崎愛吏と花邑ひなこは、女子高の同級生。高校のクラスの中で、派手な友人に囲まれている愛吏と、地味な子たちと固まるひなこは、グループもカーストもまったく違う位置にいる。授業中も休み時間も、言葉を交わすことはおろか、視線を合わせることさえない。だが、なんの接点もなさそうに見えるふたりには、他人には言えない秘密があった。

 そもそも、ふたりの出会いは中学生のとき。幼いころから周囲の評価を気にしてきた愛吏は、中学でも学校生活をより華やかに見せるため、クラスでいちばん可愛い子を友人に選んだ。それがひなこだ。田舎から引っ越してきたばかりだというひなこは、世話を焼いてくれる愛吏にすぐに懐き、どこへでも健気についてきた。

 そんなある日の授業中、ふたりに転機が訪れる。

 その日の体育は持久走だった。愛吏は、遅れがちなひなこを励ましながら走っていたが、体が弱く無理をしていたひなこは、グラウンドにへたり込んで嘔吐してしまう。

 愛吏の仄暗い欲が目覚めたのは、そのときだった。

 我慢してたの?
 わたしが「一緒に頑張ろう」って言ったから?

 あのひなが この綺麗な体から こんなに汚いものだすんだ……
 わたしのためなら なんでもしてくれるんだ

 それからというもの、愛吏はひなこに対して、恥ずかしいこと、汚いことを、定期的に要求するようになった。一方のひなこも、愛吏に求められることがうれしくて、その要求を受け入れた。高校に進学してからのふたりは、放課後、化学実験室で行うようになったふれあいを、背徳的にエスカレートさせていく。ひなの血が見たい、ひなが漏らしちゃうところを見たい、ひなの体を貫きたい。わたし以外の誰にも見せない、ひなの苦しむ姿を見たい──みだらに歪んだ共依存は、どこまでいってしまうのか?

「コミック百合姫」発の百合作品である本作は、カバーイラストに制服を着た可愛い女の子が描かれている。そのふんわり甘い絵柄とうらはらに、ふたりの情事は生々しくエグい。しかし、目を覆いたくなるような行為からも、決して目を逸らせなくなるのは、この倒錯的なやりとりこそがふたりにとってはたがいの「好き」の確認なのだと、読み手にも伝わってくるからだ。

 それにしても、1巻の時点でここまで濃厚な愛情表現を読めてしまうなら、2巻以降はいったいどうなってしまうのだろう? 秘密の花園で繰り広げられる執着の行方を、楽しみに追いかけたい。

文=三田ゆき

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