上司は機関と考える!「戦略立案」より「実行」――トップに信頼される社員の条件とは

ビジネス

2020/7/28

参謀の思考法
『参謀の思考法』(荒川詔四/ダイヤモンド社)

「参謀」。『参謀の思考法』(荒川詔四/ダイヤモンド社)によると、もともとは軍隊の中で生まれた役割であり『ブリタニカ国際百科事典』には「軍の指揮官が用兵、作戦などの計画を立て、これを実行するにあたって軍の指揮官を補佐する将校」と書かれているそうだ。音の響きも大変格好良い参謀。この不安定な世の中、「あなたの力が必要だ」と頼られる存在になりたいと思わないだろうか?

 本書は、元ブリヂストンCEOの著者が40代で社長の懐刀として抜擢された経験を基に、会社の中で参謀がどう思考するのかを説いた本である。

「参謀」は知的な謀略家。ではない!

 会議室に座ってメガネを光らせながら的確な助言をするクールな人で、実際に動くわけではない。参謀と聞いて浮かぶ一般的なイメージは、このようなものではないだろうか? しかし著者は、自らの体験から参謀に重要なのは戦略立案だけではなく、むしろ「実行を補佐する」役割のほうが適切という。

「戦略立案」と「実行」の二つはどちらも重要ですが、企業経営の現場で汗を流してきた私からすれば、より重要性が高いのは間違いなく「実行」です。

 著者は40代のとき、アメリカ企業・ファイアストンを買収するという大プロジェクトの「特命スタッフ」として現場の課長職から突如、社長直属の秘書課長に任命された。役割は社長の負担を軽減するための潤滑油。「社運を賭けたビッグプロジェクトへの抜擢」という聞こえの華やかさとは裏腹に仕事は泥臭く、朝から晩まで走り回ったそうだ。忙しい日々でもがくうちに、現場に近い社内の人間だからこそ参謀として会社の役に立てるという実感が湧いてきたという。

 社員とは複数いる人間のひとりである。現場には必ず仲間がいて、仕事はひとりで行うことは(基本的には)できない。だからこそ参謀として輝くことができる。参謀とはあくまで脇役であり、上司から信頼を得るサブで動く人のこと。自分をアピールし、認めてもらおうと必死になるような人は向かないし、上司にごまをするわけでももちろんない。

 すべては会社がより良い方向に向かうため。会社にとって何が正しいのか? 自分の頭で考えて仕事ができる人が参謀なのである。

上司は機関と考える

 と言っても、「上司が偉そう」「気が合わない」「私は気に入られていない」……。上司と相性が良くないと考えている人も多いだろう。

相性がよい上司などまずいないと考えておいたほうがいい。

 前提としてその現実を受け入れ、またネガティブな感情が湧くのも仕方ないと受け止める。その代わりに、自分の感情に振り回されないこと。これが重要なのである。

そもそも、会社というものはゲマインシャフト(家族や村落など感情的な結びつきを基盤にした集団)ではなく、ゲゼルシャフト(目的達成のために作為的につくりあげた集団)です。もともと感情的な結びつきをベースに集まった集団ではないのですから、そのような場所で「相性」の問題を持ち出すこと自体がふさわしくない。それよりも、目的達成に集中すべきなのです。

 会社という集団において、相性は関係ない。わかっていてもなかなか割り切れるものではない。そんな人には上司を人として見ないのがおすすめだそうだ。上司は「人」ではなく、「機関」。つまり、事業目的を達成するため、会社に組織された機関のひとつに過ぎないと捉えてみる。

 フォーカスを置くべきなのは好き嫌いではなく、「機関をどう使うか」。ATMやWordのようなものだろうか? 使わなければ仕事にならないのだから、付き合い方を考えるしかない。

 そんな非人間的なと思うかもしれないが、むしろ逆。「機関」を最大限活かすためには相手を理解することが必要不可欠であるし、気持ちに寄り添い、こちらも言動に注意しなければならない。ATMを乱暴に扱いお金が引き出せなくなったとする。困るのは誰か。たった今お金をおろそうとしていた自分である。

「ゲゼルシャフト」において重要なのは「合目的的」(ある目的があり、それに適合しているさま)。自分の目的は上司と仲良くなって可愛がられることなのか。それとも仕事で成果を出すことなのか……ここでも己で考えることが重要になる。

会社に甘えることも大切!?今すぐ仕事を楽しもう

 トップのビジョンを捉え、実践にうつすのが参謀である。「ビジョンなんて平社員には関係ない」と思いがちだが、トップの描くビジョンとはすなわち会社の方向性。目の前の仕事をビジョンにつなげる意識が大切である。かと言って頭でっかちなだけの社員では、一緒に働く仲間からの信頼すらも失ってしまう。

 与えられた仕事をするだけでは面白くない。「理想」や「ビジョン」を持ち、実現しようとするから仕事は面白くなる。著者はタイで不良債権の回収に従事していた際、新しいことをやりたいと新規顧客の開拓を提案した経験を通じてそう気づいたそうだ。債権の回収だけでも大変なのに、できるのかと上司に言われたものの、同僚たちは一気に乗り気に。忙しさは倍増したものの、イキイキと仕事を楽しんだのだという。

 仕事を創るなんてハードル高すぎる、できない! と思うかもしれない。この際、会社員であることを逆手に取って利用、もとい「甘える」のもひとつの手である。

 トップのビジョンを理解して提案したものは、いずれ会社のメリットとなり得る。挑戦を重ねることが参謀への道筋だ。

 社会が激変しつつある今。、プロフェッショナルであること、何より自分の頭で考えることの重要性は益々高まっている。頼られる参謀を目指して、明日から一歩踏み出してみてはいかがだろうか。

文=宇野なおみ

この記事で紹介した書籍ほか

参謀の思考法 トップに信頼されるプロフェッショナルの条件

著:
出版社:
ダイヤモンド社
発売日:
ISBN:
9784478106693