ライター激推し! 今だからこそ親子で一緒に観てほしい、親子愛を描いたアニメ4選(前編)

アニメ

更新日:2020/9/29

 新型コロナウイルスの影響で、おうち時間が増えている昨今。おうちで家族と一緒に過ごす時間も増えているのではないだろうか? 「親子で一緒に楽しめる作品はないかな…」とお探しの人に向けて、家族の絆や親子愛を描いたアニメ作品を前後編でご紹介! ここで取り上げるアニメを観ながら、笑って、泣いて、家族と過ごすおうち時間を、さらに充実させてみてはいかがだろうか? 前編ではまず2作品についてお話ししていこう。

家族との未来を選ぶか、ノスタルジーを選ぶか。クレしん映画の最高傑作!『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

クレヨンしんちゃん
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(バンダイビジュアル)

『クレヨンしんちゃん』といえば、春日部を舞台に、おちゃめでちょっとお下品な幼稚園児・しんのすけと、その家族や友達との日常を描いた、誰もが知るギャグアニメだ。そんな、『クレヨンしんちゃん』の長編作品・第9弾『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』は、数ある“クレしん映画”のなかでも特に評価の高い一本。クレしん映画の最高傑作に推す人も多く、2001年の映画でありながら、現在も根強い人気を誇る作品だ。

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 しんちゃんこと、野原しんのすけが住む春日部に、あるとき「20世紀博」というテーマパークが建設される。20世紀博は、かつて日本中が熱狂した「大阪万博」など、大人たちにとって懐かしいもので溢れていた。テレビやアニメ、そして特撮など、ノスタルジーに浸れるもので満たされ、そこは、まさに古き良き20世紀の世界。大人たちは、子供そっちのけで、20世紀博の懐かしい世界に異様なまでに没頭していく。次第に、大人たちは仕事も家事もしなくなり、ついには、子供のことも忘れて20世紀博の世界にとらわれて家に帰らなくなってしまう。それはしんのすけの父・ひろしと、母・みさえも、例外ではなかった…。なぜ、大人たちはおかしくなってしまったのか? それには“ケンちゃんチャコちゃん”率いる「イエスタディ・ワンスモア」という組織のある企みが関係していた。しんのすけと幼稚園の仲間たちは、大人たちと家族の未来を取り戻すため、20世紀博へ乗り込むことになるのだが…。

 本作の見どころは、しんのすけの父・ひろしの葛藤だ。ひろしは、20世紀博がかもし出す懐かしさにひかれ、一時は、自分の子供のことを忘れてしまう。しかし、あることがきっかけで、ひろしは、息子のしんのすけや、娘のひまわりのことを思い出す。過去の懐かしさにすがるのではなく、もう一度、家族との未来を取り戻そうと決心するひろしだが、それでも、ひろしは、たびたび古き良き昭和に心が持っていかれそうになる。ノスタルジーと家族との未来の間で激しく葛藤するひろしの姿は、あらゆる大人の心を揺さぶるはずだ。

 また、ひろしが家族のことを思い出す「回想シーン」は、最大の見どころといっていいだろう。ひろしの幼少期から親になるまでの過程が、セリフなしの音楽と映像のみで、一気に流れていく。子供の頃からはじまり、学生時代、就職、みさえとの出会い、結婚、子供の誕生、残業の毎日、家族団らんの日々…それらの情景が印象的な音楽とともに描かれる。

 おそらく、親なら誰もが感情移入できるシーンだろう。実際に上映当時も多くの観客の涙を誘った名場面である。ひろしの回想シーンでありながらも、観ているうちに、ついつい自分の人生を重ね合わせてしまい、きっとあなたも涙をこらえきれなくなるはずだ。

 物語終盤には、イエスタディ・ワンスモアと戦うべく、そして、20世紀ではなく21世紀を勝ち取るべく、野原一家は一致団結して立ち上がる。一度は引き裂かれた家族が絆を取り戻し、家族として戦いを挑んでいくところに感動する人は多いはずだ。

 しかも、これだけシリアスな内容でありながら、そこはやっぱり『クレヨンしんちゃん』。しんのすけはおバカな言動で、いちいち観ている側を笑わせてくれるのだ。「笑いあり涙あり」とはよくいうが、これほど、笑って泣ける作品も珍しいのではないだろうか? 家族みんなで「笑って泣きたい」そんなときには、間違いなくピッタリの一本といえるだろう。

行方不明の母を追い、女子高生が南極へ向かう!『宇宙よりも遠い場所』

宇宙よりも遠い場所
『宇宙よりも遠い場所』(宵町めめ:漫画、よりもい:原作/KADOKAWA)

 外出自粛が続いている現在、県外への移動も制限され、旅行を楽しむのも難しい状況。「どこか、遠くへ行きたい!」と思っている人も多いはずだ。『宇宙よりも遠い場所』は、そんな気持ちに応えてくれる作品である。というのも、『宇宙よりも遠い場所』は、女子高生が南極を目指す物語なのだ。

 青春を謳歌したいと思いながら、まだ何もしていない状況に焦り始めていた高校2年生の女の子・玉木マリは、ひょんなことから同じ高校に通う小淵沢報瀬(こぶちざわしらせ)と出会い、彼女の運命が大きく変わる。

 かつて南極観測隊員だった報瀬の母は南極で行方不明となり、それ以降、報瀬はなんとしても南極へ行くと決心していた。そんな報瀬の熱意に触れた、マリや、三宅日向(みやけひなた)、白石結月(しらいしゆづき)、そして報瀬を含む4人の女子高生は、「南極チャレンジ」に参加するべく、南極への長い旅路の一歩を踏み出すことになる。

『宇宙よりも遠い場所』は、4人の女子高生が互いに衝突しつつも、南極を目指すなかで互いの抱える悩みや葛藤を乗り越えながら成長していく物語だ。それぞれのキャラの内面の問題を、モノローグをほとんど使わずに演出で語っていく、非常に上品な作品だ。

 注目すべきは、南極までの旅路が非常にリアルに描かれているところ。例えば、南極チャレンジのメンバーに選ばれてからの訓練、南極へ行くまでの実際の経路、船のなかでの運動や食生活、昭和基地での活動…アニメでありながら、南極観測の様子が非常にリアリティをもって描かれているのだ。作品を観ながら、新しい景色に出会う楽しさ、南極観測の知識に触れる面白さの両方を感じることだろう。まるで、自分自身が南極を旅してきたかのような気分が味わえるはずだ。

 また、登場する4人の女子高生のうち、報瀬という女の子に、特に注目してもらいたい。先述のように、報瀬の母親は南極観測の際に行方不明となっている。その母を追って、報瀬は南極を目指すことになるのだが、マリたちと出会うまでは、「南極へ行く」と豪語する彼女は周囲から冷ややかな目で見られていた。報瀬は「目にもの見せてやる」といわんばかりに、誰とも遊ばず、南極へ旅立つのに必要な資金集めのためひたすらバイトに勤しむ日々を送っていた。

 しかし、周りが全部敵だと思っていた報瀬にも、自分の想いに共感してくれる友が現れる。悲しみに寄り添ってくれる友を得たことで、報瀬は母の死という悲しみと向き合えるまでに成長していく。友を得る喜びと、母を失う悲しみの、2つの大きな感情のなかで、激しく心を震わせながらも、人として大きく成長する姿に、心を打たれること間違いなしだ。

 さらに、見逃さないでいただきたいのが、報瀬が何気なく打っているメール。報瀬は毎日のように、亡き母にメールを送り続けており、そのメールを送る様子が、各回でさりげなく描かれている。このメールが、物語の終盤で、大きな感動を生むことになるので、注意深く見てほしい。物語の最後、母を想う娘の気持ちを知ったとき、涙が止まらなくなるだろう。

後編はこちら

文=木島祥尭