ギャップがジワジワくる! 感情が顔に出ない女子とそれに挑む分かりやすい男子がおもしろ可愛い

マンガ

公開日:2020/8/6

『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君(1)』(東ふゆ/KADOKAWA)

 アニメやマンガによく登場する、いわゆる「無表情キャラ」。基本的に感情の変化が乏しく淡々としていて、そんな子が時折見せる笑顔や照れ顔が可愛いと、不意をつかれてドキッとしてしまう。基本的にこういったキャラは、一切笑わない、もしくはたまに微笑むと無表情が崩れて可愛い、という魅力を持っている場合が多い。
 
 しかし先日、こんな無表情キャラの上をいく強烈なキャラが登場するマンガを発見した。『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君』(東ふゆ/KADOKAWA)だ。本作は、笑っても怒っても驚いても照れても顔に出ない柏田さんと、柏田さんの無表情をどうにか崩してやろうと奮闘する、顔に出やすいタイプの太田君のラブコメディ。

無表情の柏田さんの心の内は…?

『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君(2)』(東ふゆ/KADOKAWA)

 多くの無表情キャラと違い、柏田さんは決して感情の変化が乏しいわけではない。感情は普通にあって話もするけれど、表情だけが変わらないのだ。彼女の中で起こっている感情は、キャラの横に矢印で補足される。そして感情そのものは意外と素直で、実は太田君のたくらみに結構な頻度で引っかかって驚かされている。…が、それが表に出ることはなく、時折「おふっ」「おぅ…」と驚いてるのか何なのか分からない声を発するのみ。ゆえに、彼には強靭な心の持ち主だと思われ、より強い闘争心を燃やされる結果になるのだ。
 
 柏田さんは、笑うことだってある。しかしもちろんそれも顔に出ない。そして笑い声(?)は、「フス」という空気の抜けるような音で表現される。その笑い方がシュールすぎて、読み進めれば読み進めるほどクセになってしまう。見た目には鼻で笑っているようにしか見えず、それがまた太田君の心を逆なでするのだ。こんな、かみ合っていないコントのようなやり取りが続いていく。

『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君(3)』(東ふゆ/KADOKAWA)

 こうして一見戦っている2人だが、実は2人ともお互いに好意を抱いている。柏田さんは自身の表情が乏しく理解されないことをコンプレックスに感じつつも、そんな自分に対し必死で挑んでくる太田君に悪い気はしないようで、この関係を楽しんでいる様子。ちなみに太田君はというと、「好き」という感情と柏田さんに勝てない「なんか悔しい」という感情が混じり合い、戦いを挑んでは敗北しやきもきしている。もう、なんだかひたすら可愛い。なんなんだ、この関係。
 
 2巻では太田君の感情は読めないのに柏田さんの感情を見事に言い当てるクラスメイトの小田島さんが、さらに3巻では顔は常に笑っているのに何かと怖くてシスコンの柏田さんの兄が登場し、2人の周りはますます賑やかに! 柏田さんのファンであるという田淵も、ただの真面目キャラかと思いきやなかなか強烈な個性の持ち主だ。そして4巻ラストではついに…!?

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『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君(4)』(東ふゆ/KADOKAWA)

 話を読み進めていくと、だんだん柏田さんの内に秘めた感情が見えているような気持ちになってくる。見守りながら、「今何考えたのかな」「実は驚いてるのかな」なんて考えてほっこりしている自分に気づく。そんな不思議な魅力を持つ『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君』は、読めばやさしい気持ちになれること間違いなし。そして読み終わる頃には、普通の無表情キャラでは物足りなくなっているかも…。

文=水音(月乃雫)

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