女の子を誰一人として不幸にしない!100人の女の子に言い寄られる、異色のハーレムマンガが登場

マンガ

更新日:2020/8/16

君のことが大大大大大好きな100人の彼女
『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(中村力斗:原作、野澤ゆき子:作画/集英社)

 先日、出合ったマンガ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(中村力斗:原作、野澤ゆき子:作画/集英社)。そのタイトルから想起される異色のハーレム設定が面白く、その設定ばかりに目を奪われてしまい、レビューした記事には誤読があったため、あらためて本作の魅力を解説させていただきたい。本作を愛しているファンのみなさん、そして原作の中村力斗さん、作画の野澤ゆき子さん、申し訳ありません。

 さて、本作の面白い点だが、それはやはり主人公・愛城恋太郎(あいじょうれんたろう)に「運命の人が100人もいる」というところだろう。そもそもこの恋太郎はまったくモテない男子。中学校の卒業式で告白した女子からは、「恋愛対象としては反吐が出るようなのごめんなさい!!」という辛辣な言葉とともにフラレてしまうほど。その日、恋太郎は100回目の連続失恋記録を更新した。

 恋太郎は顔も悪くないし、「明るくて気さく」と称されるような男子だ。決してモテないようには思えないのだが、それには理由があるようで……。

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 そんな恋太郎が高校入学前に救いを求めたのは、恋の神さま。高校では彼女ができて、幸せな学園生活を送りたい。素直な願いを吐露する。

 すると、そこに現れた神さまから、「高校で運命の人と出会うことになっている」と告げられる。報われない恋に傷ついてきた恋太郎にも、ついに幸せが訪れる……! と思った矢先、神さまが告げたのは驚くべき予言だった。

 それは「恋太郎には運命の人が100人もいる」ということ。まるで夢のような話! もちろん、恋太郎も大喜びだ。

 その後、入学した高校で、早速ふたりの女子と出会う恋太郎。ひとりはおしとやかな印象の花園羽香里(はなぞのはかり)。もうひとりは快活で物事をはっきり言う院田唐音(いんだからね)。目が合った瞬間、全身に走った衝撃を自覚した恋太郎は、ふたりが「運命の人」であることに気づく。そして、「私達のどっちと付き合うのか」と迫られてしまうのだ。

 失恋続きだった恋太郎にとって、ふたりの女子から言い寄られるなんて前代未聞。そして、案の定、どちらか一方なんて選べない。悩みに悩んだ恋太郎は、例の神さまに相談することに。そこで告げられたのが、斜め上の事実だった。

 それは「ひとりの人間に対して、運命の人はひとりしかいない」ということ。加えて、「運命の人と出会った人間は、その運命の人と愛し合うことができなければ、なんやかんやあって死ぬ」とのこと。つまり、恋太郎が花園、院田のどちらかと付き合えば、もう片方は死んでしまうということ。

 そこで恋太郎が出した答えは、「ふたりと付き合う」というもの。いくらなんでも二股なんてありえないだろう……。花園も院田も、恋太郎が出した答えに戸惑う。

 ところが、この後の恋太郎がとても格好いい。恋太郎は影でコソコソ二股をかけることを選ばず、表立ってふたりと付き合い、ふたりともを幸せにすると宣言するのだ。それは彼女たちの命を救うためでもあるだろう。けれど、真正面から「ふたりを幸せにする」と話す必死な姿は逆に誠実であり、好印象だ。

 しかし、これで問題は解決ではない。神さまの予言によると、恋太郎には「運命の人が100人もいる」という。つまり、花園と院田の他に、残り98人……。恋太郎は彼女たちをひとり残さずすくい上げ、幸せにできるのだろうか。

 2巻の時点で、花園と院田の他にも「運命の人」が次々と現れる。けれど、恋太郎はその一人ひとりにしっかり向き合い、他の彼女たちにその存在を隠すこともせず、関係を築いていく。その状況を冷静に見れば、とてつもないハーレムであり、その気になればいくらでも良い想いができるはず。けれど、本作の見どころは、ひどく真面目で不器用な恋太郎が複数の彼女を幸せにするために悪戦苦闘するところにある。なんでも正直に打ち明け、どうにか打開策を見つける恋太郎。その姿は同性から見ても好感度大だ。

 最終的に100人の女子が揃ったとき、恋太郎はどう立ち振る舞うのか。誰も不幸にすることなく、また、恋太郎自身も幸せになれるのか。前代未聞のハーレムマンガの行方を見届けたい。

文=五十嵐 大

※記載内容に事実誤認がございましたので訂正させていただきました。読者のみなさん、中村力斗さん、野澤ゆき子さんにご迷惑おかけいたしましたことをお詫び申し上げます。