【次にくるマンガ大賞2020「コミックス部門」1位】 周囲を不幸な死に追いやる少女と、不死能力を持つ男が出会った時……なにが起こる!?

マンガ

公開日:2020/8/22

アンデッドアンラック
『アンデッドアンラック』(戸塚慶文/集英社)

 不死の身体を持つ者――いわゆる“アンデッド”。エンタメの世界ではたびたび描かれる存在だが、彼らの苦悩にスポットライトを当てた作品はそう多くはない。

 そんななか、マンガ『アンデッドアンラック』(戸塚慶文/集英社)は異色な設定を巧みに活かした内容だった。

 主人公は超絶な不運な女子・風子。彼女は自身の身体に触れた者に不幸を呼び、その者に死をもたらす体質の持ち主。まだ8歳の頃、両親を含め270人の命を間接的に奪った経験もある。存在しているだけで周囲の人間に不幸をもたらす。風子の心境を思うと、とてもじゃないがつらくなる。

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 だからこそ、彼女は自殺を選ぼうとするのも納得した。いや、決してどんな人にも自死を選んでほしくはないけれど、それだけ風子の苦しみは大きいのだ。

 ところが、そんな風子の前にひとりの男が現れる。なんと彼は絶対に死ねない身体を持つアンデッド。ゆえに誰よりも死ぬことを切望しているのだ。

 周囲の人を死に追いやってしまう苦しみと、絶対に死ぬことが許されない身体を持った苦しみ。一体どちらの方が苦しいのだろう。両極端な悩みを抱くふたりは、なりゆきで行動をともにすることになる。正体不明のアンデッドに風子は“アンディ”と名前をつけ、旅に出るのだ。

 やがてふたりは、ある組織と対面する。その名も「対未確認現象統制組織“ユニオン”」。彼らは風子とアンディを執拗に狙うのだが、それには理由があって……。

 そこから風子とアンディは世界の謎と対峙していくことになる。もちろん、そこには衝突が免れない。ふたりは否が応でも戦火に巻き込まれていくのだ。

 本作を読んでいて胸アツなのが、この風子とアンディがお互いに欠かせない存在だという点。不幸と不死がタッグを組むことによって、ときに想像以上の爆発力を生み、攻略不能と思われる敵をもなぎ倒してしまうのだ。その姿はまさに異色のバディ。

 また、本作は絵柄も良い! 『週刊少年ジャンプ』連載作品らしい軽快さとはっきりした線であり、それぞれのキャラクターの表情がコロコロ変わっていく。不幸や不死というモチーフを扱っていながら、必要以上に重々しさを感じさせず、カラッとした読後感に仕上げているのだ。

 2巻では“ユニオン”に招待されたふたりが、過酷な真実を知ることになる。そこで彼らはなにを決断するのか――。

 一風変わった設定を活かしたバトルものの登場に、誰もが興奮するはず。既刊2巻と、まだ始まったばかりの本作だが、きっとアニメ化もするのではないだろうか。そう考えると、いまから先物買いをしていて損はないだろう!

文=五十嵐 大