男が乙女ゲームのモブに転生したら、まさかの女尊男卑地獄!? 既定シナリオを覆そうと奮闘する主人公は…

マンガ

更新日:2020/8/21

『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』(潮里潤:作画、三嶋与夢:原作、孟達:キャラクター原案/KADOKAWA)

 最近流行りの、乙女ゲーム内に転生するという“異世界転生モノ”。転生するのはヒロインだけでなく悪役令嬢の場合も多く、断罪イベントとして起こる国外追放や死刑を免れるため奔走する、というストーリーを描いたものも多い。
 
 だが、もしヒロインでも悪役令嬢でもなく、乙女ゲームのただのモブ、しかも男性キャラクターに転生したとしたら…? 『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』(潮里潤:作画、三嶋与夢:原作、孟達:キャラクター原案/KADOKAWA)は、そんな“恵まれない転生”を果たしてしまった男性を描いた物語だ。原作は、小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた小説。
 
 本作品の主人公は、妹から「ストーリーだけ知りたい」という理由で乙女ゲームを押し付けられ、2日間徹夜でプレイしてようやくコンプした直後、めまいで階段から落ちて死んでしまった少年。リオン・フォウ・バルトファルトは、ある日その前世の記憶を思い出す。そして、今いる世界が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界であることに気づくのだ。

女尊男卑の世界に転生してしまったモブの人生やいかに!?

 そのゲームは、学園ものの恋愛ゲームに冒険や戦争の要素をプラスした流れになっており、それでいて設定はやたらとふわふわしていて矛盾だらけ。おまけに戦うのは男、稼ぐのも男、なのに女の方が権力を持っているというまさに女尊男卑の世界だ。そしてリオンは、このままでは若くして50過ぎの女と強制的に結婚させられてしまうらしい。

 リオンは、家族に迷惑をかけず、でも結婚を回避して学校へ通うため、「冒険者」となってチート級アイテムを求めて旅に出る。そして乙女ゲームの記憶を頼りに、本来主人公が手に入れるはずの希少アイテム「ロストアイテム」を、先手を打って入手しようとするのだった…。

advertisement

 学園に入ってからも、男のモブはひたすら過酷な生活が続く。在学中に結婚相手を見つけなければ出世にも響くうえ強制結婚が待っているため、どうにかマシな相手を見つけなければならない。しかし自腹で「お茶会」を開いて女性をもてなすも、攻略対象となっている上級貴族の男に人気が集中する仕組みであるため、立場は厳しい。このままいい人と出会えなければ、一生女に虐げられる運命になってしまう。リオンはそう考え頭を抱えていたのだが――途中である違和感に気づく。

 それは、本来主人公であるはずの平民出身の女の子・オリヴィアが、攻略対象に近づくこともなく、まったく認識されていないということ。そしてその主人公のポジションには、ゲーム内では見たこともなかった、なぜだか見るだけで怒りが湧いてくるような女の子・マリエがいるのだ。展開もゲームのシナリオより早く、何やらおかしい。これはもしや、マリエも転生者なのでは…? そう気づいたリオンは情報収集を開始。そこからオリヴィア、そして悪役令嬢・アンジェリカを味方につけ、さまざまな試練に打ち勝ちながらモブの大逆転が始まっていくのだが――!

 最初は本当にただのモブキャラだったかもしれないが、冒険に出てロストアイテムを得た時点で、リオンはもはやモブではなくなった。自分の道を自分で切り開き、シナリオを書き替えていったのだ。本作は、そんな自分の力で物語を進めていく楽しさと充実感を存分に教えてくれる。実生活で何か行き詰まったとき、「さて、どうしてやろうか?」くらいの心持ちで行動できれば、リオンのように新たな道が開けるかもしれない。

文=水音(月乃雫)