うっかりミスでの悪印象を防げ! 対面が減ったコロナ時代の「文章の書き方」

暮らし

公開日:2020/8/25

初心者からプロまで一生使える伝わる文章の基本
『初心者からプロまで一生使える伝わる文章の基本』(高橋廣敏/総合法令出版)

 今までの仕事のやり方が通用しなくなったウィズコロナ時代。テレワークが進み、チャットやメールでのやり取りなど、文章を書く機会が増えた。どう書けば伝わるのか、お悩みの方も多いのでは? 一瞬の言葉遣い、物の言い方が亀裂を作ってしまうこともある。ましてや文章は残るもの……。

『初心者からプロまで一生使える伝わる文章の基本』(高橋廣敏/総合法令出版)は、長年大手予備校で現代文・小論文講座を受け持ってきた著者が「基本のき」からプロも見落としがちなポイントまで、93の文章術を丁寧に指南してくれる本である。2020年5月に出版され、7月中旬にツイッターでバズが発生。軒並み売り切れという事態になった。

一日目の講義は文章を書く前の心構えから

 本書では7日間に分けて、徐々にレベルアップしていける仕組みとなっている。まず初日は……「文章をいきなり書いてはいけない」。なんのために書くか、読み手は誰なのか? 書く目的をはっきりさせ、構成を作るところから始めるのだと言う。

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 読書感想文や、遠足の感想を書いたことを思い出すとわかりやすいかもしれない。「書きたいこと」を決めないと、原稿用紙のマスはちっとも埋まらなかった。我々ライターがブックレビューを書く場合も、構成やキーワード、そしてレビューのテーマを決めてから初めてWordに向かう。何も考えずに書くと「面白かった。おすすめです」というスーパーのお客様の声のような文章になってしまうのである。

相手を思いやることが大切なのは、普段の生活の中でも文章を書く場面でも同じです。

 読み手を意識した文章とは、受け取りやすい、わかりやすいなど、ひとりよがりではないことがあげられる。

文章は直接相手が見えないだけに、知らないところで相手が不快に思ったり、傷ついたりということが起きかねません。文章を書く場合には、普段の生活以上の気配りが必要になるのです。

 我々は、LINEの短いメッセージでも相手が怒っていることに気づく。文章は思った以上に人柄が出てしまうもので、自分の印象を左右してしまう恐ろしさを秘めているのだ。

「これ知りたかった!」「実は知らない!」の連続

 日本語だからもうわかっているはず、というのは大きな落とし穴である。本書では「しかし」などの接続詞のベーシックな使い方から、読点の打ち方、そして「こういうことが知りたかった!」というアジな部分まで、明快に説明してくれる。

 例えば、
・「全然」「たぶん」の文末は何が対応する?
・理由を表す「ので」「から」はどうやって使い分けるか。
・赤ワイン「が」好き、と赤ワイン「は」好き、はどう違うのか。

 今パッと明確に答えられた方にはこの本は必要ないかもしれない。こうしたなんとなくわかっていても混同しがちな日本語の使い方を改めて学ぶことは、文章の質をぐっと高めてくれる。

 答えは、「全然」には「ない」。「たぶん」には「~だろう」が呼応する。細かいことだが、読んだ人が違和感を覚えないように、組み合わせに気を配れると文章の信頼度が増す。「全然大丈夫」「たぶんOK」、日常的に使いがちなカジュアルなフレーズ「たぶん」は避けたほうが良いかもしれない。

「ので」は客観的な因果関係の場合に、主観的な因果関係の場合「から」を使うそうだ。自分の思いを言うケースでも「から」が使用される。

 最後の「が」と「は」の使い分けに関しては……ぜひ本を参照してほしい。

後半はかなりハイレベル! 覚えておいたら一生使える

 前半をしっかり読み実践するだけでも、文章力は確実にアップするだろう。後半になると演繹法や帰納法、反証の方法などかなりハイレベルな文章技法が続く。受験で小論文が必要な高校生、レポートを出す大学生には特に役立ちそうな箇所と言えよう。

 最終日、7日目のテーマは「推敲」。苦手な方も多いと推察する。何を隠そう私もその一人で、とにかく推敲が苦手なのである。原稿を書くのは楽しい。しかし、びっくりするほどの誤字や文章のねじれに気づけず、編集をよく困らせてしまう。申し訳ない……。

 そんなライターゆえに、「推敲は時間をおいてから」の項目はしみじみと心に刺さった。何ならライターは7日目から読んでも良いかもしれない。著者は推敲するのは文法や構成だけではないと言う。表現、論理、発想までも推敲せよ、という指摘はプロでもハッとするはずだ。

文章の書き方を覚えてチャンスを掴もう!

 わかりやすくロジカルな語り口は大変読みやすく、徹底して実践的な内容である。この原稿も本のあちこちを参照しながら書いた。

 文章の書き方を知っていると、余計なトラブルに見舞われない。それだけではなく、営業のアポイント、クレームへの対応、交渉……チャンスを掴むことにもつながるのである。まだまだ自粛が続く日々。おこもりの自分アップデートに、「文章磨き」を取り入れるのはいかがだろうか。

文=宇野なおみ