『ソマリと森の神様』『かくしごと』…今だからこそ親子で一緒に観てほしい、親子愛を描いたアニメ4選(後編)

マンガ

更新日:2020/9/11

 新型コロナウイルスの影響で、おうち時間が増えている昨今。おうちで家族と一緒に過ごす時間も増えているのではないだろうか? 「親子で一緒に楽しめる作品はないかな……」とお探しの人に向けて、家族の絆や親子愛を描いたアニメ作品を前後編でご紹介! 前編では『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『宇宙よりも遠い場所』を紹介したが、後半の今回は…。ここで取り上げるアニメを観ながら、笑って、泣いて、家族と過ごすおうち時間を、さらに充実させてみてはいかがだろうか?

お父さんはゴーレム!? 異種族2人の親子愛を描いた『ソマリと森の神様』

ソマリと森の神様
『ソマリと森の神様』(暮石ヤコ/コアミックス)

「異世界もの」と聞いて、みなさんはどんなイメージを持たれるだろうか? 超人的な能力を持った主人公が大活躍して、異世界のヒロインを救出する…そんなシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、『ソマリと森の神様』は、そうしたヒロイズムとは一線を画すテーマを持つ、異世界ものとしては異色の作品となっている。

advertisement

『ソマリと森の神様』では、なんと森のゴーレムと人間の少女の「親子愛」が描かれているのだ。物語の舞台は、多種多様な見た目をした異類異形たちが支配する世界。人間は異類異形との戦争に敗れ、激しい迫害のもと、絶滅の瀬戸際まで追い込まれていた。そんな世界で、森の番人「ゴーレム」は、ある日、森のなかでとある人間の少女と出会う。鎖に縛られ、ボロボロの姿の少女・ソマリは、初対面であるはずのゴーレムを「お父さん」と呼んだ。こうして、不思議な出会いを果たしたゴーレムとソマリの2人は、ソマリの両親を探す旅に出ることになる。

 本作を観ていると、物語の随所に、「親子あるある」が描かれていることに気づくだろう。例えば、ソマリはまだ幼い女の子なので、興味があるものを見つけると、吸い寄せられるように猫や虫など興味の対象を追いかけてどこかへ行ってしまう。ゴーレムが少し目を離したすきに、毎回消えてしまうものだから、「感情がない」というゴーレムも「またか」とため息をつかずにはいられない。「ちょっと目を離したすきに…」というのは親御さんなら、誰しも体験したことがあるのではないだろうか?

 しかも上記で書いたように、『ソマリと森の神様』の世界で人間は迫害の対象であり、見つかったら食べられてしまう危険すらある。そのため、ソマリが姿を消したときは、観ているこっちもソマリの親になったような気持ちで、「大丈夫だろうか?」と心配になってしまう。なんだかんだと助けられるソマリだが、親(ゴーレム)の心配する気持ちなど露知らず、無邪気に笑うところも印象的だ。「親の心、子知らず」とはまさにこのこと。

 しかし、ソマリがゴーレムのためにがんばったシーンでも、ゴーレムは言いつけを守らなかったソマリを注意するばかりで、折角手に入れたプレゼントを無下に扱ってしまい、ソマリを悲しませるというシーンも描かれている。これこそまさに、「子の心、親知らず」である。親子なら誰しも経験する、こうした“想いのすれ違い”が、『ソマリと森の神様』では表現されている。思わず感情移入してしまう人も多いはず。

 すれ違いながらも各地で出会うさまざまな種族と触れ合うなかで、「親子とは何か?」を知り、ソマリとゴーレムは少しずつ成長していく。血のつながらない2人の間に、心のつながりが芽生えたとき、新たな親子の絆がそこに生まれる。不器用ながらも旅のなかで絆を育んでいく、彼ら親子の姿に注目してほしい。

 ちなみに、ゴーレムには、一刻も早くソマリの両親を見つけなければならない理由がある。なぜ、ゴーレムはそれほどに急いでいるのか? その点も、ぜひ本作で確認してみてほしい。

父の「隠しごと」は「描くしごと」?漫画家の父とその娘の心温まる物語『かくしごと』

かくしごと
『かくしごと』(久米田康治/講談社)

「隠しごと」の1つや2つくらい誰でも持っているものだ。この物語『かくしごと』の主人公であり父でもある後藤可久士(ごとうかくし)にも、愛娘・姫(ひめ)にいえない「隠しごと」があった。それは、自分の仕事がちょっとお下品な漫画を描く、漫画家であることだった。そう、彼の「隠しごと」は「描くしごと」だったのだ。

「娘に知られたら嫌われるのでは?」と、可久士は必死に自分の仕事を隠そうとする。しかし、バレそうになる。隠そうとして、バレそうになって…を繰り返す、親バカの可久士と、愛娘の姫が繰り広げる、ちょっぴり泣けるコメディ作品。それが、TVアニメ『かくしごと』だ。原作は『月刊少年マガジン』にて連載された久米田康治による漫画であり、TVアニメは2020年4月から6月にかけて放送された。

 この物語の魅力は、過去と現在の2つのパートで話が展開していくところにある。過去のパートでは、父・可久士の視点で、まだ小学4年生の娘のことを考えながら、ああでもないこうでもない、と父親として奮闘する姿が描かれている。

 一方、現在のパートでは、父の隠していた漫画の保管場所である鎌倉の別邸を訪れる、18歳に成長した娘・姫の視点で、展開していく。父の漫画を読んだり、別邸を探索したりしながら、あのとき、父に対してどんな気持ちを抱いていたのかなど、娘の視点から心情が語られる。

「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」とはよくいうが、この作品では、過去と現在のパートで、親子それぞれの気持ちを知ることができる。親と子の両方の気持ちが分かるので、互いに想いを理解するためにも、まさに親子一緒に鑑賞してほしい作品といえよう。

 また、現在のパートで登場する可久士の別邸には、漫画家であること以外にも複数の「隠しごと」が存在する。姫は、その父の隠しごとを一つひとつひもといていきながら、父や母の深い愛情を認識することになる。物語の随所に隠された、愛情に満ちた隠しごとにぜひ目を向けてみてほしい。

 加えて、本作は音楽も注目ポイントだ。オープニングを手がけるのは、数々のドラマやアニメの主題歌を担当し、多くのファンを獲得してきた4人組バンド「flumpool」。そのflumpoolの「ちいさな日々」という楽曲がオープニングに使われている。作品全体の青く美しい世界観と、清涼感溢れるメロディが見事にマッチしており、すがすがしい気分が味わえる。エンディングには、シンガー・ソングライター・大滝詠一の「君は天然色」が使われ、こちらも、青々とした背景と、作品の切なさ、寂しさ、優しさのすべてを表現したような、『かくしごと』にピッタリの楽曲となっている。

 切なくて、笑えて、ちょっぴり感動する、そんな親子愛溢れるストーリーを、相性抜群の音楽とともに、ぜひ楽しんでほしい。

 ひとつ屋根の下で生活していると、たとえ家族や親子とはいえ、すれ違ったり、関係がぎくしゃくしたりすることもあるだろう。今回紹介したアニメには、親と子の双方の感情が描かれている。互いの気持ちを理解しあうためにも、外に出づらいこの機会に、ぜひ一度観てみてほしい。もちろん、家族みんなで、あるいは親子で、笑って、泣いて、楽しむのも一興だ。おうち時間に、家族みんなでアニメを楽しむという時間をプラスしてみてはいかがだろうか?

文=木島祥尭