わが子は“不器用な子ども”かも…「生きづらさ」を抱える彼らがしあわせに生きるため、親ができること

出産・子育て

更新日:2020/11/9

不器用な子どもがしあわせになる育て方
『不器用な子どもがしあわせになる育て方』(宮口幸治/かんき出版)

 シルバーウィークも終わり、2学期を迎えた学校もそろそろ落ち着いてくる頃。とはいえ今年はコロナの影響で例年のように4月から学年のスタートがきれなかったこともあり、「うちの子はちゃんとついていけているのかしら?」といつも以上に心配している親御さんがいるかもしれない。そんなときは、まずはお子さんの様子をじっくり観察して、なにか不安な様子がないかを確認してみるといいだろう。つい学習面にばかり目がいってしまうこともあるだろうが、ちょっと注目してほしいのは人間関係が苦手だったり、感情がコントロールできなくてお友達とうまくいっていなかったり、先生の話をちゃんと聞けていなかったりといった小さなトラブルを抱えていないかどうか。親から見ると「こういう性格だから」と見逃してしまいそうなことでも、もしかするとそれは子どもたちからの「生きづらい」というサインかもしれないからだ。

 児童精神科医の宮口幸治先生の著書『不器用な子どもがしあわせになる育て方』(かんき出版)によると、子どもたちは小学1、2年生くらいからさまざまな不適応のサインを出し始めるという。たとえば以下のような特徴はお子さんに思い当たらないだろうか。

■すぐにカッとなる、いつもイライラしている
■先生の注意を聞けない、大人に反抗的な態度をとる
■勉強のやる気がない、集中できない、忘れ物が多い
■人の話を聞かないで、自分の言い分だけ主張する
■その場に応じた対応ができない、自分勝手な行動が多い
■やりたくないことをしない、嫌なことから逃げる
■じっと座っていられない、身体の使い方が不器用

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 これらは著者が教育相談の現場でよくみかける特徴であり、子どもたちの「生きづらさ」のサインなのだという。だが学校教育の現場ではなかなか認識してもらえず、「なまけている」とばかりに本人が悪いとされ、結果的にそのまま放置されてしまうことも少なくない。実はこうしたサインに対する正しい理解と適切なサポートはとても重要で、それがないままでいると年齢とともに不適応が進み、最悪は非行に走ってしまうこともあるというのだ(著者によれば、かつて勤務した少年院で出会った非行少年たちの子ども時代には同様の特徴が見られるケースが多いという)。

 宮口先生はそうした子どもたちを「不器用な子」と呼び、本書ではその保護者に向けて語りかける。こうした子どもたちは本当は素直でやさしい子であり、心の中では「みんなとうまくやっていきたい」と思っているのにそれができない状態で、そのもどかしさを一番理解してあげられるのは、やはり子どもの幸せを願う保護者。だからこそ保護者に向け、彼らのサインをどう理解してサポートすればいいのかを伝えようとするのだ。

 中でも本書の大きな特色は現状分析やアドバイスに終わらず、不器用な子を生きやすくする実践的トレーニングである「コグトレ」を紹介していることだろう。コグトレとは少年院の少年たちが生活の何に困り、どんなところでつまずくかを研究した末に生み出されたトレーニング方法であり、学校や社会で困らないための認知力、対人力、身体力UPにかなり効果があるというのだ。実際に先生が経験したところでは、当初はIQ50程度でほとんど会話が通じずぼーっとしていたある非行少年が、コグトレでIQが90ほどに上がり「将来は大学に行きたい」と夢を語るようにまでなったとか。なんとも頼もしいワークだが、内容的には低学年でも気軽に取り組めるものも多い。気になる方はワークシートをダウンロードできるサービスもついているので、ぜひトライしてみるといいだろう。

 子どもに何かトラブルがあるとつい自分を責めてしまう親御さんもいるが、「いま、気になっている子どもの問題は、保護者のせいではない」と宮口先生は断言する。とはいえ、やはり子どものサインに気づいて子どもを守ってあげるのは「まわりにいる大人」にしかできないことだ。もしも日頃から気になることがあるならば、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。それこそが子どもの幸せのための大きな一歩になることだろう。

文=荒井理恵