泥酔し目覚めると隣に裸の…カタブツ教育実習生×イケメン強引DKのラブバトル!? 『処女先生は逃げられない!』

マンガ

公開日:2020/10/1

処女先生は逃げられない!
『処女先生は逃げられない! 』(チノハルカ/白泉社)

 一般に、「はじめて」は記念すべきタイミングだ。たとえば、役者さんのプロフィールには「初舞台」のことが書いてあるし、その季節の走りのものは、「初物」だとよろこんで食べるというように。いずれにしても、「はじめて」は感慨深く味わうもので、気がつけば経験し終わっているようなことではない。……泥酔して、記憶を失くしているようなときを除いては。

 そんなふうに、せっかくの「はじめて」をふいにしかけてしまったのが、『処女先生は逃げられない!』(チノハルカ/白泉社)の主人公・庄司陽加だ。大学生の陽加は、生真面目なカタブツで、キスすらまだしたことがない。けれど、泥酔した翌日、目が覚めるとそこはラブホテルだった。しかも陽加の隣には、見知らぬ美青年が裸で眠っている──完全に、事後である。

「はじめて」は、結婚する人に捧げると決めていたのに。しかし、落ち込んでいるような余裕もなく、陽加は教育実習先の母校に向かった。ところがそこで再会したのは、その朝、裸体を見てしまったばかりの青年・鎗光海斗。彼はまさかの男子高校生で、しかも担当クラスの生徒だったのだ!

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 昨夜のことはまったく覚えていないけれど、どうやら未遂ではあるらしい。とはいえ、生徒とあんなコトになったと周囲にバレてしまったら、社会的に抹殺される。なかったことにしてもらえないかと頼む陽加に、海斗は言った。「でも俺 先生のこと 好きになっちゃったんだよね」「だから 先生の処女 ちょうだい」。

 ぐいぐい迫ってくる海斗だが、陽加のほうは、好きでもなんでもない人と、ましてや生徒と、そんなことができるはずがない。さらには、大人をおちょくるように軽い調子で誘う海斗に、売り言葉に買い言葉で「こっちだって 処女の矜持(プライド)ってものがあるんですから!!」と言ってしまったのが間違いだった。海斗は、ほとんど裸の陽加の写真をちらつかせ、とある勝負を持ちかけてきた。「その処女の矜持ってもの 見てみたい」「俺が勝ったら処女をもらう」。かくして陽加は、みずからの貞操と社会的な立場を賭けて、海斗との勝負に挑むことになるのだが……?

 処女先生・陽加の振り回されっぷりは、まさに「はじめての恋」に翻弄される人そのもので、共感しつつも微笑ましい気分になってしまう。一方で、恋愛慣れしていそうなイケメンDK・海斗にも、不思議と高校生という年齢以上の初々しさが感じられるのだ。それは、もしかすると、彼が「本物の恋」や「運命の人」に出会うのは、これが「はじめて」だからではないだろうか?

 カタブツ教育実習生×強引DK、ふたりぶんの「はじめて」の結末を見守りたくなる、仁義なきラブバトル。運命の人や物事に、まだ出会っていないという人はみずみずしく、すでに巡り会えたという人には、懐かしくも新しい気持ちで読める作品だ。

文=三田ゆき