私たちの食卓が大変化の瀬戸際に! レシピ提案してくれる家電やデリバリー専門レストラン、注目の「フードテック」とは?

ビジネス

公開日:2020/10/31

『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』(田中宏隆・岡田亜希子・瀬川明秀/日経BP)

 近年、食に関する業界では「フードテック」と呼ばれるキーワードが注目されています。誰にとっても身近な“食”とIoT技術をはじめとする“テクノロジー”を組み合わせた造語ですが、そのマーケットの現状をわかりやすく伝え、さらに未来像を占う1冊が『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』(田中宏隆・岡田亜希子・瀬川明秀/日経BP)。

住宅や家電まで…関連業界も広がり続けるフードテック

 本書によると、フードテックが注目され始めたのは2016年頃。米国で食関連のスタートアップが急増し、大企業との連携により、ユニークな調理家電やサービスが生み出されたことがひとつの転換期となりました。
 
 ただ、現状について「全体像は把握しづらい」と本書は語ります。それは、食に関連する業界が幅広いため。例えば、私たちの食卓に並ぶ料理を考えても「食材の開発から出荷、調理加工、パッケージング、販売」に至るまでも、それぞれの工程には非常にたくさんの企業が関わっているのが分かります。
 
 さらに、スマートフォンをはじめとしたデジタル技術の進化もフードテック業界の盛り上がりに貢献していますが、そのためにより広い業界からの参入障壁が低くなっていることもあり、住宅メーカーやキッチン、インテリア、家電など、多岐にわたる業界が今、イノベーションの新たな波に可能性を見出しているのです。

食にまつわる“購買体験”と“調理”の進化

 では、こうした食に関するイノベーションは、私たちの生活に何をもたらすのでしょうか? 本書では、私たち消費者の体験を大きく「モノを購入する場面(購買体験の進化)」と「実際に料理する場面(調理の進化)」の2つに分けています。

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 前者の「モノを購入する場面」で目立つのは、日本での導入も期待されている無人レジレス店舗「Amazon Go」やショールーム型の店舗などで、また、コロナ禍で日本国内でも利用者が増えた「Uber Eats」や「出前館」といったデリバリーサービスも私たちと食との接点を拡げつつあります。

 また、デリバリーサービスは、日本ではまだ単なる「出前」サービスだととらえられている印象もありますが、ヨーロッパやアメリカでは、デリバリーサービス専門の事業者が街中でゴーストキッチンと呼ばれる中小店舗の集約型キッチンを抱えて「デリバリー専門レストラン」を支援するなど、外食業界の常識が覆り始めています。

 一方、後者の「実際に料理する場面(調理の進化)」でもさまざまなイノベーションの事例がみられます。日本でも「クックパッド」をはじめとするレシピサイトや料理に特化したアプリなどのサービスが各種定着していますが、料理のレシピをネットで閲覧するスタイルに加えて、近年はIoT化した調理家電がレシピを提案してくれる「キッチンOS」というテクノロジーなどの進化も目立ちます。

 昨今、ウィズコロナやアフターコロナを見据えた生活様式の変化が“ニューノーマル”として注目されていますが、私たちに欠かせない“食”の分野でも、時代に合わせた激しい変化が起きています。本書を通して、その一端にぜひ触れてほしいと思います。

文=青山悠