人類は他生物にとって危険な存在なのか? 大ベストセラー『サピエンス全史』がフルカラーで公式コミック化!

マンガ

公開日:2021/1/12

漫画 サピエンス全史 人類の誕生編
『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』(ユヴァル・ノア・ハラリ:原案・脚本、ダヴィッド・ヴァンデルムーレン:脚本、ダニエル・カザナヴ:漫画、安原和見:翻訳/河出書房新社)

 先日、日本は「脱炭素社会」を標榜して、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにすると宣言した。地球温暖化を阻止するためには必要な取り組みだが、実現には多くの課題もある。そもそも論として、人類というものは地球環境や生態系に対してあまり優しくない存在だろう。実際、そのことは人類が誕生してからの歩みを見ても理解できる。『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』(ユヴァル・ノア・ハラリ:原案・脚本、ダヴィッド・ヴァンデルムーレン:脚本、ダニエル・カザナヴ:漫画、安原和見:翻訳/河出書房新社)は「人類」というものが地球の歴史から見て、いかに「危険」な存在であるかを漫画で分かりやすく解説してくれる。

 本書は世界でヒットした『サピエンス全史』の公式な漫画版であり、原作者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏自らが脚本などを手がけている。フルカラーのコミックは難しくなりがちな学術的要素を分かりやすく伝えてくれるので、「人類」──つまり「サピエンス」とはどのようなものであるかがよく理解できる。そして本書から読み取れる人類の「危険さ」とはどのようなものか、簡単にだが触れてみたい。

 まず140億年ほど前に、物質とエネルギーと時間と空間が誕生。いわゆる「ビッグバン」である。そしておよそ40億年前に地球は誕生した。そしておよそ250万年前、アフリカでヒトが出現したとされ、最古の石器も見つかっている。ちなみに現在の人類は「ホモ・サピエンス」という種であるが、かつてヒトはホモ・サピエンスだけではなかった。確認されているところでは、5万年前までは少なくとも6種類のヒトが存在したのである。本書ではカードゲームのようにその特徴を表記していて面白いが、名称だけ紹介すると「ホモ・エレクトス」「ホモ・ルゾネンシス」「ホモ・フローレシエンシス」「ホモ・デニソワ」「ホモ・ネアンデルターレンシス」「ホモ・サピエンス」の6種。しかし現在は先述の通り、ホモ・サピエンスしか存在しない。では他の種はどうなってしまったのか──?

advertisement

 この件に関しては、2つの説があるという。ひとつは「交配説」。他の種と交わることによって同一化が進み、現在のようになったということだ。そしてもうひとつが「交替説」。こちらは対立と敵対によって他の種が根絶やしとなり、サピエンスだけが残ったというもの。いずれにしても5万年も前の話であり、明確な答えは出ていないようだ。

 ただ事実としていえるのは、ホモ・サピエンスは現代まで存在し続けているということ。それはなぜか? 実は7万年前に、サピエンスに驚くべき「革新」が起こったのである。それが認知能力の革新──いわゆる「認知革命」だ。これにより、サピエンスは他の動物よりも巧みにコミュニケーションを取れるようになり、大勢の他者と協力することができるようになったのである。その結果、サピエンスは世界各地に広がっていくこととなった。もちろん彼らの行く先々には別種の「ヒト」も存在したが、少なくとも3万年前までには姿を消してしまっている。

 さらに述べれば、ヒトだけでなく、多くの「動物」も地上から絶滅しているのだ。例えばオーストラリアに150万年も生き続けたディプロトドンという巨大生物も、サピエンスがやってきた5万年前に死に絶えた。本書ではサピエンスを「生態系破壊連続殺人犯」として法廷で審議にかけている。最後は「私たち全員に責任があり、全員が自分の行動について申し開きをすることになるでしょう」と、本件を「未来の最高裁」へと委ねた形に。

 地球温暖化もそうだが、「サピエンス=人類」が生態系に与えた影響は計り知れない。「ギルティ オア ノット ギルティ?」──我々はこの未来からの問いに、どう答えるのか……?

文=木谷誠