売れないマンガ家と有能な神アシスタント――恋愛未経験のふたりがワケあって「不自由」な新婚生活をはじめて…?

マンガ

公開日:2021/1/5

おとなりに銀河
『おとなりに銀河』(雨隠ギド/講談社)

 平凡な日常にときめきを与え、大人の女性でもキュンキュンできる恋愛マンガはいつだって素晴らしい。しかも、学園ものから年の差恋愛、禁断の恋、ファンタジー、ラブコメ…とバリエーションも多く、恋は実に千差万別で、人の数だけ尊い物語が存在することを読者に教えてくれる。

『甘々と稲妻』(講談社)で心も体も温まる料理と、こまやかで柔らかな人間模様を描き、多くの読者を虜にした雨隠ギド先生の最新作『おとなりに銀河』(講談社)は、恋愛未経験者の揺れる恋模様を甘酸っぱく描いたマンガである。

 両親がいなくなり、売れない少女マンガ家兼シェアハウスの大家をしながら、幼い妹弟をひとりで養っている苦労人の久我一郎(23)。締め切りが大ピンチの最中、担当から彼のファンだという超有能な美女アシスタント・五色しおり(19)を紹介される。

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 五色さんのおかげで原稿は無事に仕上がったものの、修羅場明けに寝ぼけた久我くんは、彼女のお尻に生えている不思議な鋭い棘に触れてしまい、その瞬間に宇宙を見てしまう…! すると五色さんは、自分は実は、宇宙から流れ着いた「流れ星の民の姫」で、彼女の国では、棘で刺した者とは婚姻契約を結んだことになると真剣な目で訴える。しかも、婚姻相手は、姫から離れたり、許可なく触れたり、不適切な行いをしたと見なされると、体調が悪化するなどの「罰」が強制的に与えられるという…。

 全ては姫たる五色さんを守るため彼女に優位な契約になっているらしいのだが、その日から、マンガ家と異種族の姫…恋愛未経験者ふたりの不自由な新婚生活がはじまってしまうのだった――。

 本作は、背筋をピンと伸ばし、丁寧な敬語で話し、少女マンガの山あり谷あり一難去ってまた一難の「不自由さ」に胸を打たれたと語る五色さんがとても魅力的に描かれている。あまりの美しさに、彼女が登場するシーンは息を呑んでしまうほどだ。

 また、恋愛初心者のふたりが、同じく「不自由」な新婚生活を、恋愛関係からはじめていこうとする様子が、繊細に温かく描かれているのだが、人が人を好きになる瞬間――いわゆる恋のはじまりは、不器用で奥ゆかしくて、こんなにもハートを揺さぶるのかと感動した。

 久我くんは、突然、棘と血で結ばれた支配的な契約の下に置かれたにもかかわらず、五色さんのことを「人に負荷や罰を与えなきゃいけないなんてしんどくないですか」と心配する。久我くんは人を頼ることが下手で、弟と妹を大学まで行かせようとコツコツ働き続ける苦労人だが、仕事も丁寧で、他者の心の機微に敏感な人間だった。五色さんはそんな優しい彼のマンガの大ファンで、久我くんの心情や立場をそっと慮り、精一杯力になろうとする。久我くんの心配に、

「誰かを支配などせずに 愛情を分かち合えないものかと 私が読んだ 美しい物語のように…」

 と答える彼女も、とても優しい女性であることが伝わってきて、恋愛だけではなく、人間の思いやりや温かみが深く描かれている本作に、すっかり夢中になってしまった。

 恋をするふたりの表情がどんどん豊かになるところや、家族愛にも心を打たれるちょっと不思議で心に染みる恋愛マンガである。

文=さゆ

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この記事で紹介した書籍ほか

おとなりに銀河(1) (アフタヌーンKC)

著:
出版社:
講談社
発売日:
ISBN:
9784065214374