高いところが苦手。カゴにも上手く入れない…「黒猫ナノ」のちょっぴりドジな日常

マンガ

公開日:2021/1/9

黒猫ナノとキジシロ猫きなこ
『黒猫ナノとキジシロ猫きなこ』(ぱるぱーる/KADOKAWA)

 猫という動物は、俊敏で身軽。そんな固定観念を取っ払ったのが、5年ほど前に迎えた愛猫ジジ。ジャンプ力が低く、おもちゃもなかなか掴めない。虫を見つけると果敢に挑むものの、気づけばキャットウォークの上で翻弄させられていることも…。そうした姿を見るたび心に愛が募り、今日も愛おしいなと心底思う。

 そんなドジっ子と暮らしているから『黒猫ナノとキジシロ猫きなこ』(ぱるぱーる/KADOKAWA)は、とても親近感が湧く作品だった。本作は作者宅で暮らす2匹の愛猫のドタバタな日常を描いたコミックエッセイ。

 生後2ヶ月でおうちにやってきたナノは、猫らしくない猫。その日常には笑いと愛がたくさん溢れている。

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ちょっぴりドジな黒猫ナノの日常がユニーク!

 ナノは、ちょっぴり鈍くさい。抱えながら足で蹴る猫用おもちゃ「けりぐるみ」を上手く使いこなせず、毛づくろいに夢中になりすぎて机から落ちてしまうことも。高い棚に飛び乗ってしまった時には下僕を呼び、下ろしてもらう。

 そんなナノと対照的なのが、同居猫のきなこ。きなこはナノが家に来た1年後に家族となった子。おてんばで、ナノのご飯を素早く奪うこともあるが、2匹の仲は至って良好。嫉妬したり、戯れたり、結託してイタズラを試みたりと自由奔放な日々を送っている。

 そんな2匹の交流を見ていると、我が家にいる3匹の愛猫たちの関係にも思いを馳せたくなった。人が人と関わる中で様々なことを学ぶように、猫同士も他者との交流を通して多くのことを学習しているはず。性格も個性も違う仲間との共同生活を猫たちは一体どう捉え、どんなことを感じているのか知りたくなる。

 また、ナノ目線の世界を見ていると、自分が猫の目にどう映っているのかも気になった。飼い主のことを「下僕」と呼ぶナノと好奇心旺盛なきなこは、作者や家族を振り回す。「猫が膝の上に乗った人は動かず、家族に指示を出せる」や「猫が寝ていたら布団をたたまなくてもおとがめなし」といったコミカルなマイルールができるほど、作者一家の生活は猫ファースト。そこには自分が抱いている猫愛と似たものが存在しているように思え、親近感が湧いた。

 思い通りにならないのに、毎日が愛しくてたまらない―。猫と暮らすことには、そんな醍醐味がある。

 なお、本作はナノの日常だけでなく、2匹の違いが分かりやすく説明されていたり、実際の写真が収録されていたりと見ごたえたっぷりな仕上がりになっている。個人的にはラストに掲載されているまんがコラム「私が猫バカになるまで」が、特に染みた。

 そこに記されていた、猫を迎えて「癒される」とは何かを知ったという作者の言葉を見て、猫と出会う前の空っぽだった自分自身を思い出し、改めて、自分は猫に癒され、生きてこられた人間なのだと感じて思わずウルっときてしまった。

 猫という動物に翻弄させられ、下僕になること。それは私たち猫好きにとっては、この上ない幸せだ。性格も個性も様々な3匹の愛猫たちに「変なやつだ」と思われても、これからも猫団子を見てははしゃぎ、新たに手に入れたおもちゃを献上する飼い主でい続けたい。

文=古川諭香