添い寝で読み聞かせ、甘すぎるお茶タイム――。バリバリのヤンキーと王子様のような美しき家庭教師の授業に悶絶…!

マンガ

更新日:2021/2/22

家庭教師の岸騎士です
『家庭教師の岸騎士です。』(奥嶋ひろまさ/秋田書店)

 誰と出会うかで人生は大きく変わる。自分のことを尊重し、どんな時も励ましてくれる人がそばにいれば、想像以上の結果が出せることがあるし、素敵な生き方をしている人を見れば、自分もそうなりたいと将来の目標が決まることだってある。出会いは時に、人生の財産になりうるものだと思うのだ。

 奥嶋ひろまさ先生の『家庭教師の岸騎士です。』(秋田書店)は、そんな出会いによって人生が劇的に変わったバリバリのヤンキーと、洗練された大人の雰囲気を醸し出すセクシーな家庭教師のマンガである。

 物語は、ケンカばかりするヤンキーで、学力テストは万年最下位、大学に行く気もない高校3年生の高杉徹が、親によって勝手に家庭教師をつけられるところから幕を開ける。トオルの元にやって来た岸騎士(ナイト)と名乗る家庭教師は、ツーブロックにセンター分け、ビシッとスーツベストを着こなし、爪の手入れまで行き届いたイイ匂いのするお兄さんだった。

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 トオルは一瞬で、自分とは真逆の世界の住人であることを察知。敵扱いするのだが、岸先生は、睨みつけるトオルにニコッと笑いかけ「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」と頭をポンポンしながら声をかける。しかも、「僕が君を必ず幸せにするから全てを僕に委ねて下さい」と初日からまるで王子様のような告白めいた言葉を吐き、胸の高鳴りが止まらないワンダフルな授業を行うのだ――。

 トオルから「キシキシ」とあだ名を付けられ喜ぶ岸先生。キシキシは、勉強する気がなく、ベッドに寝転んだままのトオルを叱らず、「そんな時もありますよね」と、共に添い寝しながら現代文の読み聞かせをする。また、カバンの中からティーセットを出し、甘~いお茶タイムを取り入れたり、不良に絡まれ動けなくなっているトオルを、実は強いキシキシが助け出したりすることもあった。

 そんなキシキシに感化され、勉強の面白さや学ぶ意味を知り、次第に成績だけでなく、素行も良くなっていくトオル…! 彼は、根が単純で素直な性格。これは恋なのか!? と勘違いしても仕方がないレベルで、キシキシが自分のことを大切に思っていることを感じ取り、その思いにこたえるかのように、トオルが人間的に成長していく姿はとても感動した。そう…! 恋…!! 本作は、2人の恋愛未満の絶妙な関係性がとても美しく描かれている。トオルがキシキシに多大な影響を受け、悪い感情を抱いていないのはもちろん、トオルに夜送ってもらいながら、キシキシが、

「トオル君 月が綺麗ですね――」

と、夜空を見上げながら、きっとその言葉の意味をまだ知らないであろうトオルに話しかけるシーンは、胸がいっぱいになった。

 青春コメディではあるのだが、本作は、人生の奥深さや勉強の大切さ、人が人を想う美しい気持ちなどがギュッと濃縮されている。2人の今後が気になって仕方がない。いつか続きが読めることを楽しみに待ちたいと思う。

文=さゆ

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