誰とでも話せる魔法の言葉って!? “ラブホの上野さん”の恋愛指南『ラブゼミ 〜上野教授の恋愛講義〜』

　すごい本を読んでしまったので、ぶっちゃけ誰にも教えたくない。Twitterフォロワー数33万人超（2021年3月現在）、コラムニストで、かつラブホスタッフの“ラブホの上野さん”がガチで伝授する絶対に失敗しない悪魔的恋愛テクニック──こう聞くだけで、多くの人が興味を持つのではないだろうか。そんな恋愛メソッドが『ラブゼミ ～上野教授の恋愛講義～』（上野：原作、高倉みどり：漫画/講談社）という、誰もが読みやすく笑えるラブコメ漫画にまとまった。

　本作における上野さんの恋愛指南は、とある大学に通う女子・清澄洲崎の物語として展開される。

　大学1年生の洲崎は、同じ授業を取っている先輩、神楽坂爽太に片思い中。とはいえ、大教室で見かける彼にひと目ぼれしただけで、話したことも挨拶したこともない。名前だって、彼が友達と話しているところを盗み聞きしただけだ。しかも洲崎は、彼に可愛い女子学生がすり寄っているのを見てしまった。ひょっとして、彼女だろうか。話したこともない自分には、とても勝ち目なんかない──。

　そんなふうに考えていた洲崎の目に、ちょっと意外な情報が飛び込んでくる。大学の講義概要に、「恋愛学」を研究する上野ゼミの学生募集要項が載っていたのだ。

　担当教員の上野先生。「好きな人を彼女から奪い取る方法を教えてほしい」と頼み込む洲崎に、彼は「ゼミに入るなら恋愛テクを教えましょう」と持ちかける。かくして、上野ゼミに入会した洲崎は、上野先生の恋愛講座を受けることになるのだが……。

　と、ここまで読んでくれたあなたでも、確実にこうお思いだろう──「『絶対に失敗しない』だの『悪魔的』だの書かれても、これまでの恋愛指南本との違いがわかんないんだけど。どうせ『LINEの返信は焦らしましょう』とか、5億回くらい見たことある小手先テク本なんでしょ？」と。

　いや、わかる、よくわかる。私もそう思ってこの漫画を読みはじめた。ところが本書は、確実にこれまでの恋愛指南本とは違っている。本当に、今日から使えるメソッドしか載っていないのだ。どんなテクニックかを紹介すればその恐ろしさが一発でわかるはずだが、そうすることをためらうのは、それこそが、恋のライバルに決して知られてはいけないテクニックでもあるからだ。

　恋愛でも仕事でも、あるいはご近所との交流でも、およそ人間同士のやりとりで悩んでいることがあるならば、この1冊中にかならずヒントを見出せるだろう。ひと目ぼれした人と話すには？ 相手との会話が盛り上がらないときは？ 人に嫌われてしまったときはどうする？ 恋愛テクはもちろんのこと、ハイテンションで小技の効いたラブコメマンガも、かなりの中毒性があるので注意されたい。

　人間関係をもっと円滑に進めたいと願う人に本書を紹介する上で、思うことはひとつだけだ。どうかあなたが、この人間関係における“悪魔の禁書”を、ライバルよりも先に手に入れられますように。

文＝三田ゆき