『家庭教師ヒットマンREBORN!』天野明氏最新作は、欠陥探偵とお荷物刑事のドタバタな活躍を描く推理サスペンス!

マンガ

公開日:2021/4/13

鴨乃橋ロンの禁断推理 1
『鴨乃橋ロンの禁断推理 1』(天野明/集英社)

 今の漫画シーンにとって「少年ジャンプ」系の作品は、まさに欠くべからざる存在である。多くの作品がヒットし、アニメにもなっているのだが、なぜそれほどの支持が得られるのか。思うに、その理由のひとつとして、作家陣のバランスのよさがあるのではないか。初連載の新人作家から10年以上連載を続けるベテラン作家まで、「ジャンプ」の作家陣は非常に層が厚い印象がある。活きのいい新人が出てくるワクワク感はもちろん、ベテラン作家がどんな新作を描いてくれるのかという期待感もたまらないのだ。そして今回、『家庭教師ヒットマンREBORN!』などのヒット作を描いたベテラン作家・天野明氏による最新作が満を持して登場。それが『鴨乃橋ロンの禁断推理 1』(天野明/集英社)だ。

 本作は漫画系WEBサイト「少年ジャンププラス」で連載されており、非常に優秀だが問題を抱える探偵・鴨乃橋ロンと、警視庁捜査一課でお荷物扱いの刑事・一色都々丸が協力して、さまざまな難事件を解決していくバディもの。管内で発生した連続殺人事件解決の協力を仰ぐため、一色都々丸こと「トト」が、同僚から紹介された探偵・鴨乃橋ロンのもとを訪ねるところから物語は始まる。ロンはトトが何も話していないのに、トトの事情などさまざまなことを推理してみせるが、協力には応じようとしない。なぜなら彼は探偵活動をしたくてたまらないのに、探偵として「致命的な欠陥」を抱えているためそれが叶わず、事件と関わる状況から距離を置いていたからだ。しかし偶然に事件の発生を知ってしまい、さらにトトがサポートを約束したことで、ついにロンは探偵活動を再開するのであった。

 ロンたちが挑む事件は、水のない場所で溺死した被害者が各所で発見されるという連続殺人事件だった。ロンは死体を見ただけで事件の概要を把握し、トトが示した事件発生エリアの情報などから犯人を特定。トトと共に犯人の検挙に向かう。犯人は床屋で、酸欠空気とシャンプー台を利用して被害者を殺害していたのだ。そしてトトたちが犯人を屋上に追い詰めたとき、ロンの様子が豹変する。なんと彼は突然、犯人に「生きる資格はない」といい、死ぬことを強要したのだ。すると犯人は何かに操られたかのように屋上から飛び降りようとする。そう、ロンの抱える「致命的な欠陥」とは、犯人を追い詰め、死なせてしまうことだったのだ。しかし飛び降りる寸前のところで、トトが身を挺して犯人を助けることに成功。初めて犯人を死なせることなく事件を解決できたロンは、トトにある提案をする。それは、ロンがトトの代わりに事件を推理し、トトがその代弁者となることだった。つまりロンいわく「君(トト)は傀儡だ」ということだが、こうして奇妙な凸凹コンビが誕生することになったのである。

advertisement

 なぜロンは、トトを「傀儡」としなければならないのか。それは彼が所属していた探偵養成学校「BLUE」に関係があった。ロンはBLUE始まって以来の天才と呼ばれていたが、実習授業で追っていた事件の犯人が全員死亡したことで探偵免許の取得資格を剥奪された。彼は一切の探偵活動を禁じられたのである。そしてそれを破れば、BLUEから死の報いを受けるという。ゆえにロンは裏方の探偵活動に徹し、表向きはトトが事件を解決する形を取ったのである。

 ロンいわく「ピュアなマヌケ」なトトは善人すぎて刑事向きではないが、犯罪者であっても体を張って命を助けようとする。そんなトトをうまく誘導しながら、難事件を解決していくロン。最終的にはロンが犯人を死なせようとするところを、トトが助けることになる。この凸凹コンビは、互いの欠点を補い合って成立しているのだ。さらにBLUEからロンの調査に派遣される教官など、ロンたちの周囲には多くの波瀾が待ち受ける。実力派・天野明氏の手がける最新作は、期待に違わぬ面白さを読者に提供してくれそうだ。

文=木谷誠

あわせて読みたい