通学中「あぶない人」が近づいてきたらどうする? 子どもが安全に通学するために大切な「安全基礎体力」を親子で学ぼう!

出産・子育て

公開日:2021/4/12

いやです、だめです、いきません
『いやです、だめです、いきません』(清永奈穂:著、石塚ワカメ:イラスト/岩崎書店)

 小学校の入学シーズン、ワクワクするお子さんの横でママとパパはちょっと不安。お子さんがひとりで歩く通学路、あぶない人に出くわしたりしたら…と心配する親御さんは少なくないはずです。

 さらにこのコロナ禍で、みんながマスクをしているので、あぶない人を見分けるのがむずかしく、子どもたちはさらなる危険にさらされていると言えそうです。

 お子さんには「あぶない場所に行かないように」「あぶなそうな人に声をかけられても付いていかないで」などと教えているかもしれませんが、本当にそれで十分でしょうか? そもそも「あぶない場所」「あぶない人」とはどんな人で、どうやったら見分けることができるのでしょうか?

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『いやです、だめです、いきません』(清永奈穂:著、石塚ワカメ:イラスト/岩崎書店)は、元犯罪者や警官などから犯罪の手口や心理を聴取し、膨大なデータの中から割り出した「子どもを守る方法」を伝授してくれる1冊。小学校入学前後の子どもに向けた、家庭でできる安全教育の実践法を教えてくれます。

 安全教育とはいえ、堅苦しくては、子どものやる気が出ません。そこで、本書では、マンガやイラストを挟み、遊びの延長として学べる方法が紹介されています。新1年生のお子さんでも興味を持ってくれるはずです。

通学路の安全を確認しながら、家族みんなで「おさんぽマップ」作り

いやです、だめです、いきません p.17

 春休みのある日、大丈夫田(だいじょうぶだ)家のお父さんとお母さんは、小学1年生の花と年長さんの太郎を連れて、おさんぽに出かけることにしました。2人が一緒に通う予定の小学校は家から少し遠くにあり、ときどきあぶない人が出るので心配なのです。そこで、花と太郎は実際に通学路を歩きながら、「あぶない場所」や「助けてくれる人がいる家」などを書き込んだ「おさんぽマップ」を作ることになりました。

 持ち物は、スケッチブック、えんぴつ、ランドセル(またはリュック)。それに、おやつも。なんだか楽しそうですね。

 でも、あぶない場所とは、どんなところでしょうか? 本書ではそれを「ひまわり」さんと教えています。

いやです、だめです、いきません p.30-31

・「ひ」とりになるところ
・「ま」わりから見えない、見えにくいところ
・「わ」かれ道、わき道やうら道の多いところ
・「り」ようされていないおうちやあき地のあるところ

 これらの頭文字をとって「ひまわり」さんです。子どもが知っている言葉で覚えやすいですね。

 どこでも起こりうる犯罪ですが、あぶない人がわるいことを「やりやすい」と思う場所には特徴があるのです。その場所をマップに書き込んで把握し、通るときには特に注意することが大切です。

いやです、だめです、いきません p.36-37

 同時に、近所のお店などに普段から挨拶するなどして「顔見知り関係」をつくっておくと、いざというときに助けてくれるかもしれません。

 本書の各章には、復習に役立つ問題も書かれています。この問題が解ければ、お子さんの「自分で自分の身を守る」ことに関する知識は身についたといえそうです。

 ただ本を読むだけでなく、実践的な問題に頭を悩ませながら学ぶことで、知識の習得度がグッと上がりそうですね。

世の中のほとんどはいい人。たまにいる「あぶない人」に気をつけよう

いやです、だめです、いきません p.58-59

「あぶない人」の見分け方も本書に細かく紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。大事なのは、「世の中のほとんどはいい人だけど、たまにあぶない人が混ざっている」と伝えることです。そうじゃないと、大人はみんなあぶない人だと子どもが不信感を持ち、大人への信頼を失ってしまうからです。

 あぶない人たちの「声かけの仕方」は、大人も騙されそうな内容ばかり。「いやです!」「行きません!」など、それぞれのモデル返答を親子でロールプレイングして練習しましょう。

 中には「大人に逆らってはいけない」と遠慮してしまうお子さんもいるのではないでしょうか。そんな子にも「相手があぶない人なら断ってもいい」と認識を持たせることが大切だと感じました。相手がたとえ知っている人でも、「あぶない」と見分ける方法が紹介されていて参考になります。

 また、狙われやすいのは、おとなしそうなお子さんだけではありません。本書に紹介された「狙われやすい子のタイプ」にも注目です。

いやです、だめです、いきません p.86-87

 万が一、あぶない人に遭ってしまったら? そのときは「20メートルを全力で走ること」が大事だといいます。なぜ20メートルかというと、あぶない人は、追いかけて10メートルでつかまらなければ「無理かな」と思い、20メートルであきらめるからだそう。

 20メートルとは、だいたい電柱と電柱の間くらい。「ランドセルを背負っていないときは4メートル、背負っているときは6メートル離れたところから走り出せば、逃げ切れることが多い」と、具体的な数字がわかりやすく示されています。

学力と同様に子どもに身につけさせたい「安全基礎体力」

 どんな人があやしいのかがわかる知識や、あぶない目に遭いそうなときに危険を回避するための体の力、「いやです」と断る力、自分で決定して行動できる大人力などを身につけることで、どんなお子さんも、きっぱり断り、逃げられるようになります。この力を身につければ、「運良く逃げる」のではなく、「できるだけ確実に被害を避ける」ことができそうですね。

 ほかにも、もしものときのために「ふだんから良好な親子関係を結んでおくこと」など、子どもの心のケアにも配慮されていて、至れり尽くせり。

 子どもが自分の力で命を守る安全基礎体力は、学力などと同じように、子どもに身につけさせてあげたい力だと思います。プロの意見を参考に、信頼できる大人を代表して、親が家庭で教えてあげられるといいですね。

文=麻布たぬ

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