コロナが終息したらどこに行こう? 旅行しづらい今こそ読みたい、夢がふくらむ車中泊の旅コミック

マンガ

公開日:2021/4/17

渡り鳥とカタツムリ
『渡り鳥とカタツムリ』(高津マコト/ワニブックス)

 都市部ではまん延防止等重点措置も適用され、遠出や旅行、外食などさまざまなものが規制されている。仕事もリモートワークが推奨されているので、多くの時間を家で過ごしている人も多い。

 こうした制限下で生活していると、ときおり無性に思う。旅行がしたい!!! ふらっと知らない土地へ行って散策し、おいしいごはんを食べて、時間を気にせず日常を忘れたい。自由にあちこち行けるのは、いったいいつになるのだろうか。

 先日、そんなことを考えながら何か面白い本でもと探していたら、『渡り鳥とカタツムリ』(高津マコト/ワニブックス)という本を発見した。本書は、キャンピングカーで自由に旅する女性を描いた物語だ。

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 キャンピングカーで日本中を旅している絵本作家兼イラストレーターの主人公・渚つぐみは、ある日、千葉県九十九里浜にある道の駅の食堂でイワシ丼を食べていた。するとその横で、1人の男性が暗い顔で電話をしながら怒鳴り始める。その後、つぐみが食事を終えて駐車場に戻ると――先ほどの男性がエンジンをかけっぱなしにして車内でぼーっとしていたのだった。

 排ガス自殺かと焦ったつぐみが声をかけたことで男性は我に返るが、その後も相変わらず暗い顔。そこでつぐみは、「ねぇあなたコーヒー飲む? 淹れてあげるけど…」と自身の車へと招くことに。男性が招かれた車の中は、車内とは思えない、まるで家の中のような空間。その非日常な空間で飲むコーヒーは、男性にとって忘れられないものとなった。

 後日、この男性・望月雲平は上司に退職願いを提出。しかし保留され、有休を取ることになった。そこでふとつぐみのことを思い出し、もらった名刺にあったSNSから居場所を特定。実家の和菓子屋で使っていた配達用の車でつぐみを追ってきたのだ。ここから2人の車中泊の旅が始まっていく。

 しかし車中泊の旅といっても、雲平は車中泊などしたことがないまったくの初心者。何の準備もしてきておらず、つぐみにイチから指導を受けながら車内を改造していく。つぐみは雲平の車の窓にゴミ袋と新聞紙で目隠しを貼り、床に着替えや服を敷き詰めて寝床を作り、頭の向きを傾斜に合わせるなど寝るために必要なことを教えていく。細かいことだが、車内で“生活”していくうえではとても大事なことなのだ。

 快適な旅を続けるには知恵や知識が必要だが、こうした必要な下準備を覚えてしまえば、車での旅はどこへでも行ける。電車やバスを気にする必要もないし、荷物も車に積んでおくことができるため、制限が大幅に減るのだ。好きな場所で好きなように生きている姿は旅好きにはたまらない。今流行りのソロキャンも、こんな車があったらいつでも気軽にできそうだ。

 先日発売された2巻では、新たな旅仲間も加わりますます賑やかになっていく。それぞれさまざまな悩みや思いを抱えながら、旅をするという共通の目的で集まり、各地を自由に巡っていく。作中に出てくる場所や地名は実在するものが描かれているため、この本を読みながら「コロナが落ち着いたらどこへ行こうか」「自分なら何をするだろう」と自分の旅を想像するのも面白い。

 やりたいことや夢があれば、今のこの状況ももう少し頑張ろうと思えてくる。この『渡り鳥とカタツムリ』を読んで、鬱屈とした気持ちを希望へと繋げてみるのもアリかもしれない。落ち着いたら、私も日本各地を巡っておいしいものを食べたいな。

文=月乃雫

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