アニメ放送中の『聖女の魔力は万能です』スピンオフ作品! 異世界に召喚されたもう1人の“聖女”の物語

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公開日:2021/5/25

聖女の魔力は万能です ~もう一人の聖女~
『聖女の魔力は万能です ~もう一人の聖女~』(亜尾あぐ:著、橘由華:原作、珠梨やすゆき:キャラクター原案/KADOKAWA)

 2021年春アニメとして4月より放送されている『聖女の魔力は万能です』。小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた小説が原作で、カドカワBOOKSから小説版が、フロースコミックからコミカライズ版が発売されている人気作だ。

 本作品の主人公は、20代OLとして働いていた小鳥遊聖(通称:セイ)。ある日の夜、仕事が終わって帰宅すると、突然玄関に魔法陣が現れて異世界へ聖女として召喚されていた。しかしセイ以外にももう1人少女が召喚されており、結果、第一王子カイル・スランタニアに聖女として選ばれず放置されてしまった。暇を持て余したセイは、何かをしたいと思い薬用植物の研究所で働くことにしたのだが。ここから彼女は聖女として次々と能力を発揮していくのだった――というのが、この本編の物語。

 しかしここで気になるのが、聖女として召喚されたもう1人の少女・御園愛良(通称:アイラ)の存在。本編でもちらほらと噂が聞こえてはくるものの、「いつまでたっても安全でレベルに見合わない東の森で修行している」「婚約者のいるカイルにべったり」などその噂はお世辞にも好印象とは言えない。いったいどうなっているのか……。そんなアイラの召喚後の行動を知ることができるのが、『聖女の魔力は万能です ~もう一人の聖女~』(亜尾あぐ:著、橘由華:原作、珠梨やすゆき:キャラクター原案/KADOKAWA)だ。

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 アイラは、社会人として自立していたセイとは違ってまだ現役の女子高校生。家族と暮らし、学校に通う普通の女の子だ。そんな中で突然異世界に召喚され、元の世界には戻れないと言われてしまう。アイラは家族と友達にもう会えないのだと知り、「聖女になんてならなくていい ただ戻りたい」と涙を流す。そんな彼女を見たカイルは心を痛め、毎日のように贈り物をして慰め続けていた。

 召喚から暫く経ったころ、アイラは聖女として必要な知識を身につけるため王立学園に通うこととなる。学園ではカイルや先生がつきっきりでサポートしていたため、勉強や生活に困ることはなかった。アイラ自身も、真面目に授業をこなし、元々の才能もあってみるみるうちに魔法を上達させていく。しかしこれには、ある問題があった。カイルは侯爵令嬢エリザベス・アシュレイと正式に婚約しており、そんな彼にアイラが付き纏っていると周囲の反感を買っていたのだ。

 アイラにとって、召喚されたのは今まで生きてきた場所とはまったく違う世界。おまけに誰一人として知り合いがいない。そんな中で、自身を守ってくれるカイルを頼るしかなかったのだ。そのため今後の生活を考えるとカイルの厚意に甘えるしかなく、言われるままに従っていた。修行の件も、カイルにべったりであることも、生きるために仕方がなかったのだ。また、カイルもアイラに対して恋愛感情を持っているわけではなく、聖女として召喚した責務を果たそうという正義感からアイラを守っている様子だ。

 近年人気の悪役令嬢モノにも通じることだが、本作品を読んでいると、物語を別視点から見ることで分かる真実の重要性に改めて気付かされる。一見悪役のようでも、実はその人なりに考え、信念や何かしらの理由に基づいて動いていることも多々ある。これは作られた物語に限ったことではなく、現実でも往々にして起こっていること。「あの人がこう言っていたから」「どうせあの人は○○だから」と一部分だけを見て決めつけるのは、本当に危険なことだ。

 この『聖女の魔力は万能です ~もう一人の聖女~』は、このあとも本編と並行したアイラ視点の物語が展開されていく。元々社会人として働いていた大人であるセイとはまた違う、未成年らしい苦悩や成長を見守ることができるのも魅力。アイラはこれから、どんな道を選んでいくだろうか。また、セイとアイラが互いのことをどう見ているのかも、より深く知ることができる。本編を観て(読んで)気になった人は、本書でアイラ視点のストーリーも回収してみては?

文=月乃雫

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